地域のインフラとして生活を支えるイオンリテール
日本で知らない人はいないであろう、イオングループ。その事業規模は、営業収益約8兆6千億円、従業員は約57万人。中国、アセアンを中心に14ヵ国で事業を展開し、グループ企業は300社を超える。
日々の生活を支える「イオン」「マックスバリュ」などの総合スーパーや、「イオンモール」などの大型ショッピングセンターのほか、ドラッグストアの「ウエルシア」、コンビニエンスストアの「ミニストップ」、イオンクレジットサービスなど、小売業の様々な領域でマルチな発展を見せている。
その中で、イオンリテール株式会社は、イオングループの中核企業として、東北地方を除く本州四国地域で小売業を展開。店舗数は約350店舗、営業収益は2020年度ベースで約1兆9千億円である。「イオンリテールが運営する、イオンおよびイオンスタイルは、暮らしの必需品を提供する総合スーパーです。お客様の暮らしを総合的に支えるとともに、地域のインフラとしての役割を果たしています」と西垣氏は事業概要を紹介した。
そんなイオンリテールがDXを掲げて取り組むのは、「店舗の生産性向上」「オンライン販売の強化」「顧客接点の強化」「データを活用した新たな収益モデル」の主に4つ。西垣氏は講演で、それぞれを詳しく解説した。
店舗の生産性向上を図る、3つのデジタル施策
まず、1つ目の「店舗の生産性向上」では、『1.レジゴー』『2.AIカカク』『3.AIカメラ』の3つの具体的な施策が紹介された。
レジゴーは、“レジ待ち”の解消を目的に開発した買い物システムサービスだ。来店客は、店内を買い回りながらスマートフォンで商品バーコードをスキャンしていき、最後は支払いコードをスキャンして会計をする。非接触で買い物できることから、「ニューノーマル時代にフィットしたレジシステム」だと西垣氏。レジの待ち時間の削減だけでなく、リアルタイムに買い物の合計金額がわかるという利便性もあり、結果的に来店客一人当たりの購入点数は増えているのだそうだ。
次に、AIカカクは、AIを活用して店舗オペレーションの改善を図るシステム。たとえば総菜売り場では、その日の商品を売り切るために、値引きのシールを貼るなどの作業が必要。しかし、この作業には、商品の製造数、残数、閉店までの残り時間と客足の様子など、実は考慮すべき事項がたくさんある。これを従業員の経験値に頼っていた時は、店舗間で廃棄量に差が出るなどの課題があったという。こうした課題を受けて開発されたのがAIカカクで、客数やその日の天候、製造数、曜日、イベント情報などを鑑み、過去の売り上げ実績をもとに売り切り可能な値引き金額が自動で提示される。
「結果として、熟練社員だけでなく、入社間もないスタッフも値引き作業ができ、導入店では廃棄量の削減と業務効率の改善に大いに寄与しています」(西垣氏)
3つ目は、カメラの映像を解析して接客業務を効率化するAIカメラ。仕組みとしては、売り場に入ってきた客の行動をAIで解析し、接客が必要だと思われる場合は、従業員に通知がいく。売り場に常時スタッフがいなくても、必要なタイミングで接客ができるため、商機を逃さない。これら3つはいずれも来店客と店舗側の両方のストレスを解消する取り組みである。