LGBTQ+に対する意識・知識は?ストレート層のクラスター分析
MZ:ストレート層は、LGBTQ+に対してどのようなイメージや考えを持っているのでしょうか?
中川:ストレート層(本調査では便宜上「異性愛者であり、出生性と性自認が一致する人」と定義)5,685人を対象に、LGBTQ+に対する意識を調査した結果を「LGBTQ+に対するストレート層のクラスター分析」として発表しています。この調査では、LGBTQ+に対する意識や知識を問う様々な質問を行い、5つの因子を抽出しました。
1.課題意識:「当事者に対する差別を改善するべきだと思う」といった、LGBTQ+にまつわる課題を改善すべきというもの。
2.配慮意識:「目の前で誰かが差別的な言動を取った時は、話題を変えたり、注意したりする」といった配慮を行っているか。
3.生理的嫌悪:「同性愛やトランスジェンダーは生理的に嫌だと感じてしまう」といった性的嫌悪感があるかという因子。
4.社会影響懸念:「LGBTQ+が増えると日本の少子化につながる」「子供に悪影響がある」といった懸念・誤解の因子。
5.知識:LGBTQ+にまつわる知識。
この5つの因子をもとにクラスター分析を実施し、「1.アクティブサポーター層」「2.天然フレンドリー層」「3.知識ある他人事層」「4.誤解流され層」「5.敬遠回避層」「6.批判アンチ層」の6つのクラスターに分類しています。

MZ:電通ダイバーシティ・ラボでは、この結果をどのように捉えられていますか?
中川:アクティブサポーター層と天然フレンドリー層を合わせると、サポーティブな意見を持っている方が全体の4割となり、希望の持てる結果であると思っています。アクティブサポーターは、当事者が身近にいたり、海外居住の経験があったり、また海外ドラマをよく見る方が多い傾向にあります。これを踏まえると、知識ある他人事層や敬遠回避層の方々は、自分事化するきっかけがこれまであまりなかった人たちなのかもしれない、という仮説が出てきます。リアルな機会だけでなく、メディア接触も含めて、少しでもきっかけがあれば意識が変わるような層も一定数いると捉えています。

世の中の変化を受けて、企業はどう動いている?
MZ:LGBTQ+に対する社会の意識の高まりを受けて、企業はどのように動いているのでしょうか?
合田:アクションを起こす企業が少しずつ増えてきていることは感じています。ただ、LGBTQ+にまつわる社会課題の背景や歴史についての理解が不十分なままアクションした結果、炎上してしまうケースも往々にしてあります。そのリスクを鑑みて、「うちはまだいいかな」と考えている企業も多い印象です。
木下:そうですね。広告の中で同性カップルを登場人物の中に含めるなど、広告発信においても動きがまったくないわけではありませんが、まだまだ少ないのが現状です。LGBTQ+やジェンダーといったテーマをメインのコミュニケーション軸にしにくい、というのも、たしかによくわかります。ただ、完全に無視するのも危ないと思っています。
MZ:完全に無視するのも危ないとは?
木下:現在、市場は非常に成熟していて、商品の機能や質で差別化を図ることは難しい状況です。そういった中で、特に若年層で顕著なのですが、社会課題に対する企業の立ち位置やアクションが消費行動に大きな影響を与えるようになっています。
PRコンサル会社のエデルマンの調査によると、「60%の消費者が、企業の社会的思想や社会問題に対する立ち位置によって、自身の購買行動を変える」というデータもあります。先ほどの「LGBTQ+調査」でもあった通り、LGBTQ+に対する関心が非常に高まっている中で、多様性を高めるアクションを起こすことがこれからますます重要になっていくと思っています。