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広告が世の中に与える影響に責任を。「LGBTQ+」「ジェンダー」にマーケターはどう向き合うか?

頻発する炎上、原因はどこにあるのか?

MZ:想像していなかったところで炎上してしまうケースや、良かれと思って取り組んだのに炎上してしまうケースも度々見かけます。

合田:そうですね。先日もある女性アイドルグループのメンバーが、エイプリルフールのネタとして同性の元メンバーと挙式したという内容のSNS投稿をし、物議を醸しました。もちろんお二人の本当のセクシュアリティはわかりませんが、エイプリルフールでは通常、嘘とすぐにわかるような「ありえないこと」をネタとしますよね。同性を好きになる人はたくさんいるのに、それを「ありえないこと」として冗談のように扱うのは差別や偏見に繋がる恐れがある、という意見が相次いだのです。

 こういった炎上が起きた時「それはまずいでしょ」という意見を持つ人が増えてはきたものの、「問題ないでしょ、理解できない」という意見も必ずあって、様々な意見が飛び交います。「別にいいのでは?」という声があると、企業側も「大丈夫なのかな?」と思ってしまう。

 ですが、企業は問題を起こしてしまう前に、これまでにあった数々の炎上事例のどこに問題があったのかを専門家から学び、一貫したノウハウに落とし込むところまで進むべきではないでしょうか。特定のコミュニティや属性を持つ人々を傷つけることのない広告を目指すのは、もはや当たり前のビジネスマナーとなっています。

木下:広告の制作や企画に携わる以上、広告が世の中に与える影響力の大きさを意識することはもちろん、ジェンダーやLGBTQ+、多様性に関する知識を常にアップデートしていく責任感も重要ですよね。広告は、企業による公的な発信であり、社会の中でパブリックにあるものです。なので、絶対に目に入ってきてしまいますし、社会の文化に良くも悪くも何かしらの影響を与えます。広告を企画・制作する立場にいる人は、その責任を持つ必要があります

 また、良かれと思ってやったのに炎上してしまうケースについても、いろいろなパターンがあります。たとえば、広告では良いことを言っているのに、実際に企業の中では社員に対してサポートをしていないなど、アウターの発信にインナーの行動が伴っていないパターン。これについては、LGBTQ+のエンパワーメントをイメージ戦略やマーケティングのためだけに利用することを指す「ピンクウォッシング」という言葉もあります。

 別のパターンでは、多角的な視点をもってチェックせずに世に出してしまい、結果炎上してしまう広告もあります。自分たちはいい広告だと思っていたのに、表現の捉えられ方が想定と違った……というパターンです。

ジェンダーに関する知識はマーケターの必須教養

MZ:炎上を防ぎ、また無意識的に人を傷つけるようなことを避けるためには、どうすればよいのでしょうか?

木下:ファーストステップは、やはり知識を身に着けるということではないでしょうか。 LGBTQ+やジェンダーに関する知識は、マーケターとクリエイターの必須教養として、身に着けていけたらと思います。

合田:男性だから稼がなきゃ、女性だから家事育児を頑張らなきゃ、男性だから女性を好きになる、女性は職場の華……などというように、生まれた時に割り当てられた性別を理由に選択肢が狭められたり、役割を押し付けられたりすることが、今の社会ではまだまだありますよね。社会に浸透してしまったその押し付けを、気づかないうちに広告や商品に反映して、受け取る消費者の属性を決めつけてしまっているケースもあります。こうした無意識の偏見に気づいて、今ある押し付け・決めつけに加担しないというのは、ひとつポイントと言えるかもしれません。まずはこうした知識を得るために、勉強し続けていきたいところです。

 そして、ジェンダーやセクシュアリティについて発信をしていきたい考えがあるのであれば、自社のポリシーを専門家を交えて議論し、リリース前のチェック項目を設けるなど、様々な立場から複数人で確認する工程を組み込むのがおすすめです。TIEWAでもそういったコンサルティングをしておりますし、パレットークでも発信しています。

木下:知識を得るというところでは、みなさんパレットークを読むといいと思います(笑)。

合田:ありがとうございます、嬉しいです。パレットークでは、実話に基づくストーリーで、性に関するみんなのモヤモヤを言語化し、解決に向けた一歩を踏み出せるような漫画コンテンツを発信しています。家父長制に基づく従来のジェンダー概念を払拭して、それをみんなの当たり前として押し付けたり、決めつけたりしない。みんなが“自分らしい”選択をできる社会を目指して運営しているので、リアルな情報・知識を見聞きする機会がない方は、ぜひ読んでいただきたいです!

SNSを中心に展開。パレットトークのInstagram(@palettalk_)
SNSを中心に展開。パレットークのInstagram(@palettalk_

木下:ステレオタイプやみんなの常識をつい描いてしまう気持ちも、いちクリエイターとしてわかります。たとえば、家族団らんのシーンを描く時、「お父さんは……、ソファで新聞読ませておく?」とか。なにも考えずにできてしまうんです。新入社員のコピーを見ていても、女性向けのコピーとなると、やはりメイクが云々といった従来の女性らしさにとらわれているものが多くて。その方向で書くほうが簡単なんですが、それにとらわれない表現を考えると、もっとおもしろくて新しいものができるかもしれない。これは私自身への喝でもありますが、諦めずにクリエイティブをやっていきたいですね。

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広告の受け手は、表現の変化を受け入れるのか?

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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/04/22 08:00 https://markezine.jp/article/detail/38737

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