※本記事は、2022年4月25日刊行の定期誌『MarkeZine』76号に掲載したものです。
定期誌『MarkeZine』76号 特集:リテール最新動向
第1回:「顧客体験価値の向上」を共通ゴールにしよう。『小売DX大全』著者からの提言
第2回:鍵は「UXへの落とし込み」リテールビジネスの今後を消費者調査から紐解く
第3回:半歩先の進化が、より良い顧客体験に ユナイテッドアローズのEC・アプリのリニューアルから学ぶべきこと(本記事)
第4回:「セブン-イレブンアプリ」で高まる店舗体験とその先にあるラストワンマイル構想
第5回:業界キーパーソンに聞くイチオシの買い物体験
第6回:買い物体験を豊かにする、最新リテールテック
第7回:リテールテックで店頭体験は進化する──量販店などで導入広がる「リモート接客」の可能性
ECになければいけない機能のベースを整える
株式会社ユナイテッドアローズ 執行役員CDO
マーケティング本部 本部長 藤原義昭(ふじはら・よしあき)氏1974年名古屋生まれ。大学卒業後、リユース大手企業に入社、同社での最終役職は執行役員マーケティング統括部長。2021年4月の当社入社後は、執行役員CDO DX推進センター担当本部長として、自社ECサイトのリプレイス、商品管理システムの刷新など、競争優位性や業務生産性を固めるDX戦略を推進している。2022年4月より現職。
──今回オンラインストアのリニューアルを行うにあたり、意識していた点を教えてください。
今回のオンラインストアのリニューアルは、コロナ前から予定していました。基盤となるシステムが古くなっており、オムニチャネルやOMO、スマホ中心の購買体験を見据えて様々な改善が必要だったためです。
そして、リニューアルで意識していたのは、店舗用とオンライン用で分かれていた在庫を共通化することです。これまでの在庫の持ち方だと、店舗用をオンライン用に移すなどの作業が発生し、発送に時間を要するケースが起きていました。しかし、今回のリニューアルで共通在庫を実現することで、最短で翌日の発送を可能にしました。
また、在庫を共通化することで、店舗も在庫を極力持たないようにしつつ、売り切れが発生したらすぐに取り寄せできるので、在庫効率も良くなります。
──リニューアルと聞くと、ついお客様向けの機能に目が行ってしまいますが、裏側の在庫の部分が重要だったんですね。
そうですね。お客様に見える要素に関しては、むしろ大きく変更しないことを意識していました。様々なものをECで購入するのが当たり前になっている中で、独自性の高い機能を提供しても逆に買いにくくなってしまい、余計な離脱を生み出してしまいます。
そのため、アパレルのECとしてなければならない機能を一通り揃え、全体的に改善を加えてベースを引き上げることがECのリニューアルでは重要だと思います。たとえば、今回のリニューアルではページの表示スピードの速さにこだわりました。データを見て検証しながら、画像の表示方法やUIを改善し、リニューアル前に比べると体感値にはなりますが約1.7倍の表示速度になりました。