ベイシアグループの事業規模は国内小売第6位相当
ベイシアグループは北関東中心に28社をグループ企業に持ち、その売上高は約1兆円。「ベイシアそのものより、グループ会社であるカインズやワークマンの方をご存知かもしれません。カインズはホームセンター最大手であり昨年末には東急ハンズを買収しました。ワークマンは作業服からアウトドア衣料へと、会社そのものの見せ方変更で業績を大きく伸ばしています。それらをグループ企業とする個性的な会社です」と亀山氏は切り出す。
ベイシアグループはワークマン以外は非上場なため、上場企業を対象とした大手媒体の小売業ランキングには顔を出さないが、2021年ではイオン、セブン&アイ、ファーストリテイリング、ヤマダHD、そしてパン・パシフィック・インターナショナルHDに次ぐ、日本で6番目の事業規模である。
ベイシア自体の売上は、2021年度の発表で3,056億円。本社は群馬県前橋市にあり、群馬県、埼玉県、千葉県を中心に139店舗を展開している。店舗フォーマットは、大型の衣食住提供のスーパーセンター、近隣企業と併設するショッピングモール型、そして単体のスーパーマーケット。食品を中心としたアメリカのウォールマートのような衣食住の大型店舗の展開を得意としている。
アプリはメイン顧客の8割が使用 この1年数ヵ月でやり遂げたこと
ベイシアでは、2020年10月にマーケティング統括本部およびデジタル開発本部が立ち上がった。その直後に既に企画中であった、ベイシアアプリがローンチされ、12月からはアプリ内でデジタルポイントプログラムも始まる。
アプリ関連で見ると、2021年5月にアプリからプッシュ配信をするために非常に重要な、MAツールを導入。6月より、アプリ内で様々な読み物を配信し、商品の良さを訴求することで、顧客とのエンゲージメントを醸成してきた。11月にはアプリ会員に対してネットプロモータースコア(NPS)の調査を開始。店舗で配信する折込チラシの最適化、デジタル化も実施した。
次にポイントプロモーションの仕組みを自動化した。統計分析ツールSPSSの導入も果たす。2022年1月にはベイシアで「晴れの日受注」と呼ぶ、恵方巻や土用の丑の日など、季節にいろどりを添えるイベント商品の受注機能も追加した。今やメイン顧客の8割が使用するアプリとなったという。
2021年4月には、楽天とのネットスーパー契約に合意している。これは日本で1社目であった。開業は2022年1月。現在は5店舗展開中だ。6月、社外に積極的に赴き商品や店舗の良さを伝える、攻めの広報活動を始めた。ほぼ同時期にデジタルマーケティング戦略バージョン1として百数十ページの戦略書を策定した。8月にID-POSデータの分析環境を導入。さらにはデジタル開発本部エンジニアチームの仕事の仕方、志を示すValueを定義する。
立ち上げ期にはマーケティング合宿、アプリ検討会などを行いながら、デジタルコンセプトの定義を明確にしていったという。さらに中期経営計画を再確認し、会社のDNAを見つめるような「DNA合宿」も実施した。
「デジタルマーケティングを進める上で、やはり一番大切なのは会社全体がどこに向かうかです。会社の中期経営計画がクリアでないと、デジタルマーケティングの戦略も作れません。ですから、私から経営に働きかけをいたしました」と亀山氏。
以上のように、1年と数ヵ月という短期間のうちに様々な取り組みを行ってきた。どうすればこんなにスピード感を持ってプロジェクトを推進できるのか。
「質的にも量的にも、このようなことができた主要な理由を7つのポイントにまとめております」と、亀山氏は下記を列挙した。
ベイシアがスピード感を持ってDXを推進できた7つのコツ
- デジタルリーダーの採用
- デジタル戦略の策定
- デジタルの内製化チーム、デジタルマーケの専門家の採用
- 新しい働き方、制度を設計
- カインズ・ワークマンのベスト・プラクティスを活用
- プラットフォーマー・サービスのAPI活用
- 良い文化
それでは1点ずつ見ていこう。