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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

マーケティングを経営ごとに 識者のInsight

ショールーミング事業で髙島屋が目指すもの D2C企業とともに作る新しい小売りのカタチとは

ギフトプラットフォームとしてのMeetz STORE

──今回の事業で「ギフト」に焦点を当てたのはなぜでしょうか。

川口:日本でもショールーミング型店舗が様々な場所に進出している中で、髙島屋で展開すると考えた際、強みの一つが「ギフト」だと考えました。元々百貨店に来店されるお客様は、ギフトを探しに来られる方も多いです。またちょっとしたギフトを贈り合うことが、若い方を中心により日常的になっています。昔からお客様のギフト選びをサポートしてきた髙島屋の得意分野を、拡大するギフトのカジュアル化にも対応させていきたいと考えたのが理由の一つです。

 また、昨今はギフトのあり方が多様化していると思います。お歳暮や誕生日プレゼントといった画一的なものだけではなく、贈り主と受け手の方の関係性の数だけギフトの形がある。贈り主の方の想いをどう形にしていくか、そこをサポートする仕組みをMeetz STOREでは用意しています。

──具体的には、どんな仕組みで、新しいギフト選びの体験が生まれるのでしょうか。

川口:多くのショールーム型店舗で、AIカメラを使った行動データ分析やお客様の属性を元にしたマーケティングを行っていると思います。私たちもそういった定量データを活用していますが、それ以外の「接客」という定性データにも大事なインサイトが隠されていると考えているんです。

 ショールーミング=接客をしないという印象もあるかと思います。しかし私たちは百貨店として長年ギフト選びのお手伝いをしてきた中で、お客様との「会話」の重要性を痛感してきました。何を贈りたいのかあいまいなまま来店されるお客様も多いので、お客様自身も気づかれなかったインサイトを、ギフトコンシェルジュが会話の中でどう引き出すのかが重要だと考えています。

 一方で、一人でじっくりギフトを選びたいお客様向けには、オンラインのメディアを充実させて、商品やブランドのストーリーをよく読んで吟味できる仕組みを提供します。その中で、詳しい人に相談したい場合はギフトコンシェルジュによるオンライン接客のサービスもご利用いただけるようにしています。

 もう一つのポイントとなる仕組みは「ソーシャルギフト」です。ソーシャルギフトとは、贈りたい相手の住所を知らなくても、SNSやメールを通して受け取り用のURLを共有することで、ギフトを贈れる仕組み。会って渡すのが難しい、相手の住所を聞くのがはばかられる場合でも、ソーシャルギフトなら気軽に贈り物をすることができます。Meetz STOREのプラットフォームから「○○さんよりギフトが届いています」と受け手に通知し、受け手が自身の住所を入力することで、ギフトを受け取ることができる仕組みを構築しています。「想いをつなぐ場」として、贈り主の「送りたいけど送れない」課題をどう解消するのか議論した結果、ソーシャルギフトにたどり着きました。

D2C企業の可能性を広げる

──D2C企業にとっては、このMeetz STOREに出店することでどんなメリットがあるとお考えですか。

川口:メディアを通してストーリーをより深くまで知ってもらえるというのは、これまでご説明した通りです。

 加えて、Meetz STOREに出店したD2C企業同士、または百貨店に入っている老舗ブランドとのコラボレーションが生まれる可能性があると考えています。というのも以前、百貨店のポップアップストアに出店したクラフトビールのD2C企業さんが、百貨店に入っていた大手の紅茶メーカーから声をかけられて、コラボ商品を作ることができたというケースがありました。このような化学反応が、Meetz STOREでも起きるのではと期待しています。

 また、TTICでは越境ECの事業にも注力しているところです。髙島屋は海外にも店舗を持ち、現地にも多くのお客様がいらっしゃいます。しかし海外の店舗がコロナ禍の影響で苦戦している、また海外から日本の店舗に来店されるお客様が減っている。そんな中、渡航できなくても日本の商品を海外につなぐ仕組みとして越境ECに取り組んでいるのです。今、Meetz STOREに参画した企業の3社に1社が、この越境EC事業にも出品したいとの声をいただいています。海外への販路確保にもつながる点は、出店企業にとってのメリットと言えるでしょう。反対に、日本に出店したい海外のD2Cブランドからもお声がけいただくことも多いです。

 さらに、Meetz STOREの店舗ではAIカメラを使った行動データや、接客でのインサイトを蓄積しています。またMeetz STOREのオンラインサイトでもデータを分析することで、マーケティングに活かすサイクルを目指しています。これは私たちの店舗だけでなく、出店するD2C企業にも共有し、テストマーケティングに活かしていただきたいと考えています。

──具体的に出店するとなると、どのように商品が展開されるのでしょうか。

川口:一定の期間、ブランドごとにスペースを確保してそこに商品を展示いただく形になります。しかし短期のイベント性の高いものを訴求したい場合など、期間限定にする場合もあり、そこは柔軟にD2Cブランド企業さんと会話しながら売り場を作っています。店舗でその商品を体験されたお客様が、Meetz STOREのオンラインサイトにアクセスし、購入いただく仕組みになっています。

 Meetz STOREはお客様とブランドの想いを形にするギフトプラットフォームです。私たちが魅了された商品・ブランドのストーリーを伝えたいという想いも、この場で実現できるようにしています。素晴らしい商品を生み出している企業というのは、一人で運営されているブランドや、SNSでファンが増えている作家さんなど、商売を大きくしたい企業ばかりではありません。なので出店には経済条件がハードルにならないよう工夫しています。

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テクノロジーの力で新しい顧客体験を生み出す

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この記事の著者

岡田 果子(オカダ カコ)

IT系編集者、ライター。趣味・実用書の編集を経てWebメディアへ。その後キャリアインタビューなどのライティング業務を開始。執筆可能ジャンルは、開発手法・組織、プロダクト作り、教育ICT、その他ビジネス。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/05/25 07:30 https://markezine.jp/article/detail/38991

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