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ショールーミング事業で髙島屋が目指すもの D2C企業とともに作る新しい小売りのカタチとは

 髙島屋は2022年4月29日、ショールーム型店舗「Meetz STORE(ミーツストア)」の1号店を新宿髙島屋に開き、いわゆる「売らない店」に参入した。「百貨店ならではの接客サービス、ギフト機能を充実させた専用オンラインサイト、D2C企業を中心とした従来の百貨店にはない品揃えを実現することで新しい価値を提案していく」という。Meetz STORE運営会社である、髙島屋およびトランスコスモスの合弁会社TAKASHIMAYA TRANSCOSMOS INTERNATIONAL COMMERCE PTE.LTD.の川口貴明氏はこのMeetz STOREを「ただの売らない店舗ではない」と断言する。この事業で同社が創り出す顧客とブランドのつながりや、ショールーミング事業の先に見据えるものについて伺った。

※本記事は、2022年5月25日刊行の定期誌『MarkeZine』77号に掲載したものです。

ショールーミング事業展開の背景

──まず、川口さんのご経歴、およびTAKASHIMAYA TRANSCOSMOS INTERNATIONAL COMMERCE PTE.LTD.(以下、TTIC)設立の背景について伺えますか。

川口:TTICは、2015年に設立された髙島屋とトランスコスモスの合弁会社です。髙島屋は小売りとして日本国内・海外のリアル店舗と取引先との豊富なコネクションを有し、トランスコスモスはグローバルBPOに強みを持つ中で、日本の良質で魅力的な商品を海外市場に提供すると共に、海外販売網をECを含めて構築することを目的に合弁に至りました。

 私は新卒で髙島屋に入社し、海外駐在員として現地でのものづくりや買い付けに従事。その後日本でバイヤーとして自主編集ショップの立ち上げや販売マネジメントに携わったのちに、TTICに出向しました。

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タカシマヤトランスコスモスインターナショナルコマース
マネージングダイレクター 兼 CEO 川口 貴明(かわぐち・たかひろ)氏

1969年生まれ。1992年同志社大学卒業、同年髙島屋入社。京都髙島屋の婦人服売場に配属後、イタリア・ミラノ駐在員として現地ブランドとの商品開発や買付、契約などに約10年間従事。帰国後は婦人服やラグジュアリーブランドのバイヤー、百貨店店舗のマネジメントに携わったのち、2015年TTICに出向。2021年8月マネージングダイレクター兼CEOに就任。

──髙島屋グループのTTICがショールーミング事業をスタートさせた背景をお聞かせください。

川口:TTICでは、2019年頃から新規事業の立ち上げを検討していました。営業推進チームと一緒に議論していく中で、20〜30代の若手からの意見で多かったのが「D2Cブランドとの事業を形にしたい」というものでした。しかし、ブランドやメーカーが店内に在庫を抱え、販売スタッフを派遣していただく従来型の百貨店ビジネスでは、商品生産力や資金力が発展途上のD2Cブランドの参入は難しいという課題がありました。

 そこでD2Cブランドの百貨店への参入障壁を下げ、店頭での展開を実現させていく事業として「Meetz STORE」の企画をスタートしました。髙島屋グループとトランスコスモスには、海外を含むリアル店舗やオンライン店舗、D2Cブランドの販路構築に寄与できるナレッジ・人材・拠点などといった様々なアセットがあります。それらを存分に活かして、日本国内や海外に成長を求めるD2Cブランドとの取り組みを進める第一歩として、オンラインとオフラインの融合(OMO)店舗を立ち上げることとし、「実店舗で商品を見てから購入を検討したい」というニーズにも対応すべく、ショールーミングの形を採用いたしました。

D2Cブランドの想いを載せた「体験型メディア」を目指す

──では、「Meetz STORE」のビジネスモデルについて詳しく教えてください。どういったコンセプトで、どんな特徴があるのでしょうか。

川口:まず、ショールーム型店舗=売らない店舗のイメージがありますが、Meetz STOREはそれとは少し異なり、「リアル店舗とオンラインでつながるメディア」を標榜しています。新聞・雑誌やデジタルメディアにはない、触ったり試食したり様々な体験ができる、リアルなメディアです。

 あえて「メディア」と表現するのは発信したいものがあるからです。既存の髙島屋のお客様にも、これまで百貨店と接点のなかったお客様にも、このメディアを通して新しい視点やコンセプトの商品に触れていただきたいという思いを込めました。また、小売りの新しい形を業界にもお客様にも発信していきたいといった意図があります。

「Meetz STORE」店内イメージ
「Meetz STORE」店内イメージ

川口:ではこのMeetz STOREというメディアに載せる内容は何かというと、「D2Cブランド各社が商品に込めたストーリー」です。多くのD2Cブランドは深いストーリーを持っており、そのストーリーをどう伝えられるかが鍵になります。Meetz STOREでは、店舗の中でブランドストーリーを紹介するほか、タブレット端末からストーリーの掲載されたオンラインサイトへアクセスすることもできます。また、店頭のギフトコンシェルジュが接客の中でより詳しいブランド背景をお話しすることも可能です。つまりお客様は、リアルな体験を通して、時にはギフトコンシェルジュの接客を受けながら、ストーリーへの理解を深めて商品を購入できるわけです。

 Meetz STOREで扱う商品は「ギフト」に焦点を置いています。そのためブランドが商品に込めたストーリーを購入者、つまりギフトの贈り主が受け取り、その想いをギフトの受け取り手の方が感じることができます。この想いの循環が、Meetz STOREが目指したい小売りの新しい形です。

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ギフトプラットフォームとしてのMeetz STORE

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この記事の著者

岡田 果子(オカダ カコ)

IT系編集者、ライター。趣味・実用書の編集を経てWebメディアへ。その後キャリアインタビューなどのライティング業務を開始。執筆可能ジャンルは、開発手法・組織、プロダクト作り、教育ICT、その他ビジネス。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/05/25 07:30 https://markezine.jp/article/detail/38991

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