お金ではなく時間、モノの品質ではなく自分の個性を大切にする
2つ目は「コスパからタイパへ」。スマホの登場によって情報量が急増する中、Z世代は情報が爆発した状態から人生をスタートさせている。時間を費やしても処理不可能な情報量があるため、情報は追うものではなく選ぶものになっている。そのため、同じ時間でどれだけ自分にとって価値ある情報やスキルが得られるかという「タイムパフォーマンス」が重要になっているのだ。
コンテンツも、倍速や切り抜き視聴で楽しめるファストコンテンツが増加している。準備がいらない、時間が長くない、一目でわかることなどが重視され、コンテンツの消費速度が上がっている。TikTokからヒットが生まれているのも、短尺でパッと見てわかりやすいのが一因といえるだろう。
「加えて、情報を受け取るだけではなく発信することが当たり前になったので、『KY』かどうかを気にすることも減りました。誰もが情報発信できるので、たとえば努力というものも、隠すものではなく晒すものに。また、やりたいことを仕事にする人も増え、自分の好きなものに対して全力で取り組む熱さを持っています」(用丸氏)
教育・学校環境においては、競い合わないことをベースに、個性やスキルを重視し、個の力を伸ばす教育内容に変化している。クラスの中の構造も、見た目や性格・キャラで判断する「スクールカースト」のような構造は薄まり、互いの嗜好性の違いをフラットに受容していく横型の「サークル」のような関係性になってきている。
友人関係も、決まったコミュニティにおける友人関係よりも、好きなことや趣味で繋がっている友人関係を重視する人が増えている。顔も本名も知らない相手とSNS上で繋がって、やりとりをする中で自然と実際に会うようになった、ということも珍しくなくなった。「バーチャルで出会った友達なんて友達じゃないだろう、ということは言ってはいけないということです。これからはメタバースもどんどん身近なものになり、オフラインとオンラインは二項対立のものではなく、どちらもリアリティがあるものであるという価値観に変わっていきます」と用丸氏は語る。
お金ではなく時間、モノの品質ではなく自分の個性を大切にするZ世代には、「まずは3年頑張れ」というような言葉は響かない。電通若者研究部が大学生を対象に2021年に実施した調査では、「就職した企業で仕事にやりがいを感じられなかったら1年以内に退職する」という回答が約半数となった。「Z世代に対しては、上から目線ではなく横から目線で、伴走型のコミュニケーションをしていくことが大切です」と用丸氏は解説する。
モノ・コト消費ではなく、意味を重視する「イミ消費」の時代に
3つ目は「サステナブルなイミ消費」。Z世代は、サステナビリティやSDGsという概念を学校教育でも習っている。アメリカでは、13歳から25歳までの消費者の67%が、社会問題に向き合わない企業の商品購入を「やめた」、または「これからやめる」と回答している。また、「リーズナブル」という言葉は単に「価格が安い」という意味で使われてきたが、Z世代にとってリーズナブルとは、ただ安いだけでなく、明確なreason(選択理由)があるかどうかがポイントになっている。つまり、モノ消費においてもコト消費においても意味を重視する「イミ消費」の時代になっているのだ。
ファッション領域においても、ファストファッションではなく、サステナブルなファクトがあるかどうかが判断基準の「ファクトファッション」が支持されるようになってきた。これまでのようにシーズンごとに新しいものを出して大量消費するのではなく、循環させていくことが重視されている。
また、LGBTQや多様性への受容度は若年層ほど高い。10代の7〜8割は「LGBTQであることを知って、態度を変えるのはカッコ悪い」と回答している。