利用促進は「自然と使いたくなる仕組み」が肝要
現在、LINEスターバックスカードは発行数約260万枚。利用者の多さは友だち数810万の同社LINE公式アカウントから自然に流入している側面もある。しかし、肝はLINE公式アカウントによるコミュニケーションを通した利用の促進にある。
例えば、LINE公式アカウントではカスタマイズの紹介をしている。スターバックスのドリンクは様々なカスタマイズを施せる。反面で、複雑さゆえにカスタムオーダーをためらうユーザーも存在する。そこで、LINE公式アカウントでおすすめカスタマイズを配信するとともに、店頭で見せればそのカスタマイズを注文ができるようにした。ユーザーが自然と店舗でLINEを立ち上げられるようにしているのだ。
他にも、LINEスターバックスカードにはデザインを切り替えられる機能が付いている。今なら季節に合わせたかわいいデザインのカードを発行できる、というメッセージも効果的だという。

「お客様に喜んでいただくことでエンゲージメントが高まり、『こういうの便利だよね』と広まっていくのです」(濱野氏)
当初はLINEスターバックスカードのブーストも狙って、LINEスタンプのプレゼントキャンペーンを通して友だち数を増やす施策も展開していた。効果が認められる一方で、一過性で数を増やす方法ではブロック率の上昇など課題も見られたという。そこで、顧客のエンゲージメントを高めていくキャンペーンやコミュニケーション施策へとシフトした。
ロイヤルユーザー育成以外のメリット
LINEによる取り組みはロイヤルユーザー育成以外にも様々なメリットがある。
例えば、モバイルオーダーによるオペレーションの効率化。スターバックスの店舗にとって最も重要なことは、接客中に会話を通して顧客と関係性を構築することだ。LINEを利用する多くのライトユーザー層がモバイルオーダーを使用することでレジでの作業が削減される。これにより、店舗スタッフはコネクション作りに集中できるようになった。
加えて、購買データや行動データの取得が可能なため、商品開発や出店計画など様々なことに活用していける点も効果的だと濱野氏は評価する。
スターバックスを利用する頻度が高くなることが重要
改めてスターバックスのネイティブアプリとLINE活用を整理したい。次の画像は横軸でStarbucks Rewards会員か非会員か、縦軸でStarbucks Rewardsのスターがない状態か集められる状態か、スターでごほうびをもらえる状態かにユーザーをマッピングしたものだ。

LINE公式アカウントがStarbucks Rewards非会員に対してのアプローチを行い、Starを集められるLINEスターバックスカードがライト層を準会員に引き上げる。集めたStarでごほうびをもらうためには会員登録が必要だ。この登録を通してLINEユーザーもStarbucks Rewards会員へとステップアップする。さらに、LINE Starbucks Order & Payでネイティブアプリと同等の利便性を提供することでユーザーの活性化が実現する。
「そのままLINEを使うお客様もいらっしゃいます。一方で、LINEの利用から最終的にネイティブアプリへ移行し、正式な会員としてStarbucks Rewardsを使われるお客様も多くいらっしゃいます」(濱野氏)
このようにネイティブアプリとLINEを掛け合わせることでインクリメントリーチの増加や、ライトユーザーの育成を効果的に行えることがわかる。
また、「LINEを通して多くのユーザーにモバイルオーダーを提供できることが一番のベネフィットです」と濱野氏。長い列に並ばずにすむことで、スターバックスを利用してみようという気持ちが醸成される。
スターバックスを使う頻度が高くなることが、ユーザーにとってもスターバックスにとっても最大のメリットになるのだ。