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子どもの写真・動画共有からGPS見守り、医師の往診……世界を広げる「みてね」、その事業戦略とは?


ユーザーニーズから見える家族の多様性

MZ:ユーザーの課題は国籍不問とのことですが、共通点と相違点を詳しく教えてください。

佐藤:やはり核家族化が進んでいて、スマートフォンが普及していて、子供が生まれれば写真と動画を大量に撮って、整理と保存と共有に悩む。みてねのコア体験の価値ニーズは普遍的だと感じます。むしろ米国は国土が広く、欧州では祖父母が別の国に住んでいるケースも多いので、本当に会う機会が少ないため、オンラインで孫の成長が見られる価値は強いですね。

 一方、家族の多様性については配慮してきた事柄の一つです。日本はパパ・ママ・子供というかたちが多いので、ユーザーインターフェースもママが最初にみてねに登録した場合は、招待する相手の選択肢の一番上にパパが出て来るようにしていました。しかし、ローカライズの際に「ママが登録したのにパパとママの両方が出てこないのは明らかにおかしい」という指摘が当たり前のように入ります。

 家族の定義が人数にも反映されます。みてねに招待できる家族のリミットは当初30人で、日本ではオーバーしたことはありません。しかし海外展開を始めて30じゃ足りないと言われて、50に増やしました。今、さらなる増加を検討しています。また、招待の表現についても「ゴッドペアレントはどこに入るんだ?」と指摘もあって、家族の定義が国によっても異なっています。

MZ:そうなると、家族のその思い出を支えるという根本の家族って何なのかから考える必要が出てきそうですね。

佐藤:そうなんですよね。家族の定義ってなんだっけという話も出ています。

MZ:そういった指摘は海外ユーザーから届くのですか?

佐藤:基本的には、弊社の海外展開の各国担当が判断します。正しいローカライズのために、まずネイティブの採用から始めるんです。リリース前の翻訳はボリュームがあるので、外部の翻訳会社にも協力を仰ぎますが、表現の調整はローカライズの責任者が行います。

MZ:各国の事情とプロダクトを両方知った人が社内にいるんですね。

佐藤:その通りです。リリース後のユーザーに対する発信はすべて担当者が訳しますし、お問い合わせも7言語で受けており、CSチームと担当者が連携して対応にあたります。CSを入り口としたプロジェクトの改善サイクルを重要視しているので、届いた要望も毎月集計して、言語別にニーズを分析して、フィードバックしています。

MZ:印象的な意見や、改善されたポイントなどはありますか?

佐藤:本当にたくさんあるのですが、直近で言うと、管理者を招待する際の表現ですね。みてねのユーザーは、写真を削除したり公開範囲の設定などができるオーナーと、写真の閲覧やコメントなどができるフォロワーの2種類に分かれています。以前はオーナーをパパ・ママに限定していました。しかし、日本でも家族の形態に多様性が出てきており、この2種類では駄目だと判断して、1年ほど前にカスタム名でオーナーを招待できるようにしました。

 すると今度は、フォロワーとして招待したい親族を間違えてオーナーとして招待するケースが増えたので、パパ・ママという表現をやめて「アルバムの管理者」という名前に変更しました。公開範囲の設定時にも「夫婦のみ」という表現から「管理者のみ」にしています。

画像を説明するテキストなくても可
画像左:以前の家族招待画面。パートナーをパパ・ママと限定している。画像右:2022年6月時点の画面。アルバム管理者と表現

MZ:家族の多様さが日本でも顕在化しているのですね。

佐藤:そうですね。その変化の中でも、子供を愛情込めて見守りたい、子供の成長を楽しみたいという思いは万国共通なんだと改めて感じる面でもあります。

思い出の預かり場所として、いかに価値を提供していくか

MZ:みてねを次の世代に渡していきたいとおっしゃっていましたが、子供が成長するにつれ、親も写真は撮らなくなるし、子供自身も独り立ちしてみてねに触れない期間が出てくるかと思います。その後、みてねに戻ってきてもらうためには何が必要だとお考えですか?

佐藤:そこは将来の課題なので、将来考えます(笑)。ですが例えば、20歳までの成長動画を自動生成して、結婚式で流してあげることも可能かと思います。

 また、これは親の立場の話ですが、子供が反抗期になった頃に「4年前の今日」といったスライドショーが届いて、そこに子供の変顔なんかが出てきたりすると癒やされるんです。スマホのホーム画面上で写真が見られるウィジェットを使うと、ほぼ毎日写真が届くのですが、ついつい見てしまいます。要するに、時間が経てば経つほど、蓄積されたアーカイブが宝物になるわけです。この資産を活かした価値の提供は様々なやりようがあると思います。

MZ:ユーザーが蓄積している思い出が、みてねにとっても非常に大きな資産なのですね。最後にもう少し地に足がついた視点での、今後の展開について伺えますか。

佐藤:今取り組んでいる大きな課題は海外マーケティングの強化ですね。今後は開発を含めたグローバル体制の強化を考えています。今年に入ってドイツとアメリカでも開発メンバーが参加してくれているので、海外での事業開発を加速していきたいですね。

 もう一つは、引き続き周辺事業の裾野を広げていくとともに、各事業をきちんと軌道に乗せて成長させていきたいです。そのためにも、M&Aも含めた様々な手法で、事業の成長を支えていきたいですね。

MZ:本日はありがとうございました。

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この記事の著者

伊藤 桃子(編集部)(イトウモモコ)

MarkeZine編集部員です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/07/03 15:29 https://markezine.jp/article/detail/39245

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