商品やサービス選択への示唆
ビジネスとしてもSDGsへの貢献が求められる今、環境や社会に配慮した商品/サービスを選んでもらうにはどうしたらよいのか。前提として、社会課題への興味・関心が日常の商品選択と必ずしも結びついていない現状がある。その背後には、自分へのメリットを考えると「環境や社会」の優先順位を下げざるを得ないという実情があった。
サステナブルなライフスタイルが日常に溶け込んでいる【(5)北ヨーロッパ式正義感】ですら、商品選択の際、「自分へのメリット」と「環境や社会への配慮」は6対4の割合で自分へのメリットを優先させ、価格や手に入りやすさとの折り合いを付けていると述べていた。
そんな中でも選ばれている商品や購入の動機を紐解いていくと、下記のことが言えそうである。まず、環境や社会に配慮した商品を「わざわざ」探すことは稀なため、既存の接点を活用することの重要性が示唆された。選ばれている商品は「いつも行っているコンビニのプライベートブランドのフェアトレード商品」「いつも買っているチョコレートがアフリカの子どもたちの助けになる」というように、「いつもの」お店やブランドが入口となっていることが多い。
「サステナブル」であることが商品を手に取る入口となることは少ないかもしれないが、意識せずに選んだ「いつもの」商品が環境や社会に貢献していると知って、自分の選択が「助けになっている」と意義を感じ、愛着を増す要因となることがあるのだ。
次に【(2)義務感起点】からは、情緒面や自己像を関連付けた動機付けについてヒントを得られるかもしれない。【(2)義務感起点】にとっては、社会貢献をすることで「社会的に望ましい自分でいられる」「達成感を得られる」ことが価値になっている。外発的動機がスタートとなる人が今後増えていきそうだと考えると、このように「社会から見た自分」軸で達成感を得られる経験を提供することは有効な動機付けとなるのではないか。
最後に【(1)趣味活】からは、少数ではあっても熱烈な支持者を惹き付けるヒントが得られそうである。もっと知りたくなる、調べたくなる要素を提供し、行動することで「没入する楽しさ」を味わえる経験を創出することができれば、初めから「意識が高い」わけではない生活者の興味を喚起することができるかもしれない。
企業に必要なのは行動の見える化とメジャー化
今回のインタビューで見えてきたのは、メディアやSNSで見かけるような、自分たちで世界を変えていこうと声を上げ、仲間とつながって活動するZ世代とは違った、もう一つのZ世代の姿である。私たちが話したZ世代は、大きな社会課題を前に自分は無力と感じつつも「たった1回の行動が、大それたことでなくともすてきな結果をもたらしてくれる」ことを願い、小さな一歩を踏み出していた。
そんなもう一つのZ世代に企業は何ができるか。必須と思えるのは、行動のインパクトを量的に見える化することである。それも個人だけではなく、集団での行動を見える化し、未来へのポジティブなインパクトを与えていることを示すことができれば、自分たちには力があると実感できるかもしれない。さらに、今回のインタビューでは「社会課題」について周囲と話す機会がほぼないということも共通して聞かれた。興味のない話題を出して相手を困惑させたくないため、「社会課題」について話す相手は関心を共有しているごく少数の友だちか、自分をよく理解している親友、もしくは家族に限られていた。
「社会課題」がメジャーな話題になり、仲のよい友だちも実は関心があるのだと知れば、環境や社会に配慮した行動はもっと周囲に波及していくのではないか。そうすれば、サステナブルな商品やサービスももっとメジャーな存在になっていくのではないか。市場調査会社の立場でも微力ながらできることを試みていきたいと考えさせられるインタビューとなった。
【調査概要】
定量調査(Webアンケート)
調査地域:全国
対象者条件:15〜69歳の男女標本
抽出方法:「マイティモニター」より抽出しアンケート配信
ウェイトバック:性年代構成比を、2020年度実施国勢調査データをベースに、人口動態などを加味した2021年度の構成比にあわせてウェイトバック
標本サイズ:n=2,556
調査実施時期:2022年1月25日(火)〜1月27日(木)
定性調査(オンラインデプスインタビュー)
調査地域:全国対象者
条件:インテージのサステナブル行動セグメントで「Super」「High」に分類される15〜25歳の男女標本
抽出方法:弊社パートナーのパネルよりリクルート
標本サイズ:n=9
調査実施時期:2022年4月9日(土)〜11日(月)