インタビューで見えてきた、5つのタイプ
9人へのインタビューから、課題への向き合い方やモチベーションが異なる5つのタイプが浮かび上がってきた(図表3)。
 この中から、Z世代の特徴と結び付いている【(1)趣味活】、学校教育/受験制度と結び付いている【(2)義務感起点】について少し詳しく見てみたい。
(1)趣味活
【(1)趣味活】は高い熱量でSDGsや社会課題に向き合っており、その熱量の高さは「推し活」に近い。熱量の源泉は課題への「貪欲な興味・関心」で「夢中になっている」「没頭している」状態。実際、SDGsや取り組んでいる社会課題は、自身にとって「趣味」「好きなこと」と述べていた。
このタイプは課題について熱心に調べて知識・理解を深め、関連した行動を積極的にとっており、消費行動もそれに関連している。自身の関心のある課題に取り組んでいる企業の商品/サービスを積極的に選び、逆に課題に背を向けている企業を選ばないこともある。気持ちとしては、Z世代の特徴と言われる「応援消費」「推し消費」に近そうである。
また、関心のある課題に紐付く周辺領域への広がりも見られる。たとえば、脱炭素に関心の高い社会人は、ゴミの処理にともなうCO2排出を考えてフードロスを出さないように買い物をしたり、フードマイレージを意識して地元産のものを選んだりしていた。
一方で、「エシカル」「サステナブル」と広く認識されているブランドでも、自身の関心の対象と結びつかない場合には選ぶ理由になっていなかった。このように、【(1)趣味活】は直接的・近接的に関連がある領域の中で、関心のある課題と消費行動や商品選択が結びついていた。
(2)義務感起点
【(1)趣味活】が内発的な興味・関心に基づいているのに対し、【(2)義務感起点】は外発的動機によって社会課題を意識し始めている。AO入試対策がきっかけで社会課題に興味を持った大学生は「義務感からスタートしたが、自然といろいろなものに目が向くようになったし、問題意識が生まれてきた」と語っていた。大学入試において総合型選抜や学校推薦型選抜の占める割合が大きくなっていることを考えると、入試対策を起点として社会課題に取り組み始める人は今後も増えていきそうだ。
【(2)義務感起点】では社会貢献をすることで「利己的でない」自己像を維持したい気持ちが見られた。そのため、関心事外の課題に対しても、手の届く範囲に手段があれば幅広い行動をとっている。前述の大学生は、所属するボランティアサークルの仲間から「フェアトレード」なるものがあると教えてもらい、検索してみたらいつも行くコンビニで、手頃な価格でチョコレートが手に入るとわかったので、それ以降はフェアトレードのチョコレートを選ぶようにしているとのことだった。「それを買うほうが絶対に貢献してるし、買うだけで貢献できる」と力強く語っている。
一つひとつの課題を突き詰めるわけではなく、行動の帰結までは理解が及んでいないものの、フットワークを軽く「貢献できること」があれば行動している様子が見られた。
