※本記事は、2022年7月25日刊行の定期誌『MarkeZine』79号に掲載したものです。
買収提案でようやく注目され始めたTwitterの事業内容
イーロン・マスク氏(以下、マスク氏)による買収提案を受けて、Twitter社の非上場化の可能性(WallStreatのしがらみからの解放)や、サブスク事業への拡大(広告のしがらみからの解放)など、次のステージへの構想が噂され始めた。
マスク氏は、「広告は嫌いだ」と自身のTwitter上で公言している。実際にTesla社の経営も広告利用によるマーケティング手法や予算がゼロに近いままに、莫大なる成長を果たした。この機に、現在の代表的なプラットフォーマーのひとつであるTwitter社の足元(Before)を観察して、次なる未来の可能性(After)を考えてみよう。
事業の中身は「すべて、10割」広告収益で、赤字事業
Twitter社は営業赤字の連続だ(図表1)。
2017年に赤字幅が減少し、翌2018〜2019年に黒字転換したが、2020年から再び赤字に戻っている。この2017〜2019年は「トランプ大統領ツイート」でインプレッション数が引き上がった時期と重なる。
Twitter事業は、Google/Alphabetのような「(赤字の)クラウド事業」の開発や投資は行っていない。収益は「すべて、10割広告」のはずだったと思いきや、ロイター日本語版やヤフーニュースなどでは、広告収益が「9割」で、何やら「1割他にある」とされている。
下記は、2021年のTwitter社の決算資料にある「自社ハイライト」の上位3つだ。
- Revenue(売上総利益):約6,600億円
- Advertising(広告)セグメント:約5,860億円
- DataLicensing(データライセンス+その他)セグメント:約740億円
たしかに、セグメント別では「広告」の収益と「データライセンス+その他」の収益比率が「9対1」のように見える。しかし、「その他(1割)」と仕分けられているのは、Twitter社が2013年に買収した「MoPub(モバイル広告・ネットワーク)」の事業収益を指す。つまり、合計すれば、事業収益の「9割が自社広告で+1割が広告ネットワークの副業」という広告100点満点の事業モデルだ。
ちなみに、Twitter社は昨年末にそのMoPub事業の売却を完了している。マスク氏の構想以前から、自身でもサブスク事業への転換が始まっていた様子だ。