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米国最新事情レポート『BICP MAD MAN Report』

Twitterの脱・広告へ イーロン・マスク氏が唱えるビジネス側の理由

「広告データ」のマイナスリスク

 Twitter社が2021年に計上した赤字は、ユーザーデータにまつわる株主集団訴訟の和解金(約1,000億円)の費用計上が大きい。この負債計上は、約700億円分の保険金で相殺できているが、それでも赤字計上だ。リーチやフリークエンシー、インプレッションに頼る「軽いデータ側」を扱うビジネスは、このような(積立)保険コストや(一括の)訴訟金を覚悟しつつ、そのマイナスリスクをまるで「税金」のように背負う。

 今後マスク氏の打ち立てる事業目標が高ければ高いほど「狙われる」可能性は高まり、「軽いデータ側」のバックアップ(保険金)のデフォルトも引き上がっていく。不特定の大衆リーチが軸の広告一本足事業では、「負のリスク」がさらに高まっていくのだ。

 一方でTesla社は、広告によるクルマ販売を利益のトリガーにしないどころか、月額199ドルの「フルセルフドライビング(FSD)」機能のサブスクでユーザーと繋がる方程式を発表している。

テクノロジーの英知の掛け合わせ

 マスク氏が事業主となる場合のTwitter社への関心事(2022年5月時点)は、「世界中のどの逸材を新生Twitterの組織にヘッドハントするのか」に集まっている。今後のマスク氏による「英知の掛け合わせ」のマジックは、日本企業においても事業改革に大いに参考になる。

 「Paypalマフィア」と呼ばれるマスク氏が立ち上げた(所有する)事業は、読者も覚えきれないほどに広がる。「SpaceX(宇宙輸送・有人宇宙飛行)」や「Tesla」などはおなじみとして、「The Boring Company(ラスベガスに地下トンネルを掘って次世代輸送システムを構築)」「Neuralink(脳神経とAIの接続)」「Starlink(衛星インターネット)」「OpenAI(人工知能研究の非営利団体)」と、先端テクノロジーに両手を広げて走っている。

 マスク氏には、これら企業を設立または主導した「信頼できる経営者(オペレーター)群」という持ち札がある。マスク氏はついにTesla社での自らの役職を「テクノキング」と年次報告書(p19)で記載し、名乗っている。まさにテクノロジー陣をキングとしてどう組み合わせ采配するのか、期待が膨らむ。

2022年7月時点でのあとがき

 本稿執筆時(2022年5月)はTwitterの買収劇からの思考だったが、現在では「マスク氏側の買収の撤回発言、Twitter側の訴訟」という展開に進んだ(2022年7月27現在)。これら全ての話題は、記事というインプレッション数の増加に繋がり、少なくとも人々のTwitterの事業や内容への関心度合いが高まったのも事実。広告を使わずに人々の関心を集める(引き上げる)マスク氏なりの手法だ。

 マスク氏の行動は「後になって、振り返れば」目標が達成されていた、というように人々の常識や憶測を越えていることが多い。いま確かなことは、9月13日にはTwitter社が臨時株主総会を開催して、株主から1株54.20ドルでの売却意向を再確認する投票を行い、その上で10月にデラウェア州裁判所にて裁判が開始されるスケジュールだけだ。

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この記事の著者

榮枝 洋文(サカエダ ヒロフミ)

株式会社ベストインクラスプロデューサーズ(BICP)/ニューヨークオフィス代表
英WPPグループ傘下にて日本の広告会社の中国・香港、そして米国法人CFO兼副社長の後、株式会社デジタルインテリジェンス取締役を経て現職。海外経営マネジメントをベースにしたコンサルテーションを行う。日本広告業協会(JAAA)会報誌コラムニスト。著書に『広告ビジネス次の10年』(翔泳社)。ニューヨーク最新動向を解説する『MAD MAN Report』を発刊。米国コロンビア大学経営大学院(MBA)修了。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2022/07/29 09:30 https://markezine.jp/article/detail/39483

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