ステレオタイプ的な広告からの脱却
——デジタル上のターゲティングからもう少しくくりを広くすると、この数年で「広告の多様性」が強く求められるようになり、従来のステレオタイプ的な広告の在り方やデモグラフィックに頼るマーケティングからの脱却を模索する企業も出てきています。
そうですね。たとえば、誰をターゲットとして設定するか? を考えるときに、ペルソナを決めるケースが多々あります。しかし、このペルソナを決める作業がもはや限界を迎えているように思います。
ペルソナとして設定するのは「典型的なお客さん」です。たとえば、家具のブランドだったら「さちこさん:埼玉在住の33歳で、結婚して子供が1人いる。普段はこんなことを考えている」といった具合ですが、これは少し見方を変えると「どれだけステレオタイプを盛り込めるか?」という作業ですよね。ある意味では、効率よく広告を作る・届けるために必要な作業とも言えるのですが、ペルソナとして設定される側の反感を買うような偏った捉え方が混じりこんでしまう可能性は避けられません。多様性を求める社会において、ステレオタイプをもとに普遍的なターゲット像を決める、という広告の在り方は、明らかに限界を迎えていますし、時代の流れに逆行しているとも思います。
実際に、広告業界でも脱・ステレオタイプの動きは出てきています。国連女性機関のUNWomen主導のもと、「ステレオタイプ的な広告の作り方はやめよう。今あるステレオタイプを見つけて、それをなくす方向にしていこう」と働きかける取り組みがあります。最近は、LGBTQ+の方の恋愛も普通に描かれるようになったり、女性起業家や女性社長が登場するドラマもあったりしますよね。こうした変化を見ると、少しずつ「幸せの多様化」が進んでいると思います。また、固定概念にとらわれない可能性を常に議論し続ける必要性を感じます。