Z世代攻略のブランディングで求められるのは“絶妙な匙加減”
MERY Z世代研究所の斉田です。MERYでは、ユーザーコミュニティを通し、Z世代と近い関係の中で「Z世代ってこうだよね」とひとくくりに捉えてしまわず、目の前で見て聴いて、肌感覚で探るということを大切にしています。そして、それを通して得た知見を、様々な企業・ブランドのマーケティング活動に活かしています。
前回は『「発信する消費者」をいかに巻き込むか?Z世代攻略の鍵を握る「インフルエンシューマー」とは』と題し、Z世代総インフルエンサー時代を迎える中で、「発信する消費者」をいかに巻き込み、マーケティングコミュニケーションを設計するかが重要になっているという話をしました。今回は、そうしたインフルエンシューマーを生み出すための土台となる、Z世代攻略のブランディングについてお話したいと思います。
後ほど改めて整理しますが、ブランディングの基本は「論理的な一貫性」です。プロダクトが持っている機能をもとに価値の構造を整理し、それをパーソナリティに落とし込む。そして、それに沿った表現を統合的に管理していく。つまり、「一貫性」や「統合性」にポイントがあります。
他方、Z世代がターゲットのブランディングでは「その一貫性をちょっと崩す」ことが大切になります。頭でっかちに整理されたものにはキュンとしないし、好きになれない。ロジカルな納得や共感と、エモーショナルな憧れのバランスが絶妙に取れている、そんなものをZ世代は求めているのです。このあたりの微妙な匙加減について、詳しく解説していきたいと思います。
ブランディングの基本をおさらい
元々ブランディングが広がった背景には、より良いものを安く大量に作れば売れていた時代から、モノがあふれ、似たような機能の競合商品だらけになり、付加価値が過剰価値になってきた時代の変化があります。似たような機能を持つ商品群の中で、差別化によって市場シェアを適切に分断し、その状態を安定化させる。そのために、市場でのイメージを固定化し、ファンとのエンゲージメントを高める。要するに、中長期的にポジションを確立する行為として発展してきたわけです。
アプローチとしては、「論理的な一貫性」を軸に「構造整理」された何らかのフォーマットを用いるのが一般的です。フォーマットは何でもよいのですが、私はピラミッド構造で整理することが多いです。
ピラミッド構造で土台になるのは、プロダクトやサービスの「FACT」の領域。事実として、そのプロダクト・サービスは何なのか? たとえば、仕組みであったり、成分であったり。別の言い方では「RTB(Reason To Believe=信じるにたる理由)」と言ったりすることもありますが、まずはここをきちんと整理します。
次は、そのFACTを「価値」に転換します。この価値とは「機能的価値」「情緒的価値」「精神価値」に細分化されるもので、STP(セグメンテーション/ターゲット/ポジショニング)の戦略整理や、ターゲットインサイトの分析をもとに価値を規定していきます。また時には、企業文化も絡めて規定していくこともあります。
ブランドの価値が規定されると、ブランドのパーソナリティ(性格)が透けて見えてきます。アグレッシブなのか、信頼感があるのか、楽しそうなのか、誠実でお堅めなのかなど、ブランドの価値がブランドらしく発揮される時のパーソナリティがここまでの工程で「論理的に自然と」決まっていきます。
これらを加味して、ブランドのコアの部分にあたる「ブランドエッセンス」を決めます。ちなみに、昨今は、顧客や人の意識変化の中でブランドパーパスが重要視されるケースも多く、土台の「FACT」のみならず、最上流のブランドパーパスとのハンバーガー構造で規定していくケースや、ブランドそのものの振る舞い(ビヘイビア)を規定するところも出てきています。