「セルフブランディング」という言葉が氾濫している
次に田中氏は「組織内におけるセルフブランディングの方法」に関する悩みを紹介する。
組織の中で自身のセルフブランディングの方向性に悩んでいます。周りの方から「調子に乗っている」「業務に集中していないのではないか」と言われてしまいます。共感を得ながらセルフブランディングをしていくにはどうしたらよいでしょうか?

この悩みに対して木下氏は「セルフブランディングを自分のことばかりアピールすることだと勘違いしていませんか?〈中略〉自分のブランディングを行う上で、常に周りへの感謝の気持ちを“本気で”言葉にしていくことが重要です」とコメントする。
榊原氏も、セルフブランディングの意味をはき違えている人が多い点を指摘した上で、次のように語る。
「数年前に、某テレビCMで『誰かの仕事は誰かでできている』というコピーを見ました。まさにこのコピーの通りだと思います。“独りよがり”なセルフブランディングは、結果としてブランディングにはなっていない、むしろマイナスになるのではないでしょうか」(榊原氏)
「私の若い頃は『クライアントやパートナー企業との関係さえ円滑に回っていれば良い』と考えていました。社内評価は二の次。しかし、それだけでは社内を含めて周りを幸せにできないと思い直しました」(田中氏)
社内で理解者を作ることがキャリア形成の第一歩
一方「組織内で自分のポジションが確立できているかどうかも重要」と語る鈴木氏。立場的に偉くなるという意味ではなく、周りから「彼・彼女はああいう人だ」と認識されていなければ、セルフブランディングは成立しないという。鈴木氏の発言を受けて、榊原氏は上司の目線で次のように話す。
「上司の頭の中で『この部下はこういう性格だ』というイメージが明確に定まっていなければ、部下が良かれと思って実践したことも『間違っている』と認識してしまいがちです」(榊原氏)
成果物ひとつとっても、ディレクションの仕方や手順は人それぞれ。上司と部下でやり方に違いが生まれるのは当然だが、その違いを上司が「誤り」と捉えるか否かは両者の関係値によるというわけだ。
田中氏は最近、自身が苦手だと感じていることについて周囲から褒められる機会が増えたという。「50歳を過ぎてようやく自信がついてきた」と話し、上司をはじめとする社内の人間関係に悩む聴講者に向けて、焦らずじっくりと自身の個性を伸ばすよう勧めた。