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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2022 Autumn

データで広告PDCAを変えていく。あしかけ2年、NTTドコモの全社&代理店を巻き込んだ広告最適化

CPAが半減、CVが4.5倍になったキャンペーンも

 これら一連の取り組みの成果は、すでに現れている。1年間で月平均15%のCPA改善を実現するなど、大きなコスト改善につながっているそうだ。

 例にあがったNTTドコモの新料金プラン「ahamo」のキャンペーンにおいては、2021年7月と2022年7月の1年を比較すると、CPAは48%とほぼ半減、CVは4.5倍まで伸びている。そこまでの結果が出た要因は、やはりPDCAの高速化にあると野村氏は分析している。

 また、社員の業務スキル向上という面でも効果を実感できている。たとえば、虎の巻により、業務のPDCAをフォーマット化したことで、着任1ヵ月の新任社員でも既任の社員と同等の報告が可能になったことが1つあげられる。ほかにも、会議中の議論のレベルが上がったこと、これにより部全体の運用水準が上がり、担当者のスキルアップにつながっていることなども定性的な成果として共有された。

部内から全社へ。業務変革の拡大を目指す

 このように、まずはブランドコミュニケーション部内での活用実績を積んだ後、ネクストステップとして考えたのが部内から全社への展開だ。部のミッションである「全社のマーケティング高度化」のため、部内での事例を全社へ拡大させていった。

全社の広告/マーケティング活動高度化のため、部内での事例を全社へ拡大
全社の広告/マーケティング活動高度化のため、部内での事例を全社へ拡大

 まずは導入メリットを実感してもらおうと、PDCA会議に参加して、取り組みを具体的にイメージしてもらうところから始めた。この時、PDCA活動の成果や事業貢献に対するインパクトがどの程度あるかも数字で伝えていく。あわせて、「PDCAマニュアル(虎の巻)」に加え、ヒアリングシートや広告代理店との要件定義書などのツールも展開するなど、使い方のサポートも欠かさず行った

 だが、これらの業務変革を拡大・浸透させていくのは、やはり簡単ではなかったようだ。スムーズな導入のために色々と準備して挑んだものの「各サービス個別の背景、事情がある中で、統一・標準化したツール、やり方を導入することは想定以上に困難だった」と野村氏は話す。

 解決策を考える中で出てきたのは、「各事業部に深く入り込み、一緒にPDCA改革する」というシンプルな案。メディアプランニングやマーケティングのサポートをする中でツールを使って業務を変革し、成果を見える化、各部署の資産としてもらうことで、自走化を実現しようと考えた。

 ただし、全サービスに深く入り込むこともまた難しい。そこで現在取り組んでいるのが、事業部で協力者(アンバサダー)を見つけ増やしていく取り組みである。深く入り込んだ部署にアンバサダーをつくり、その人たちが活動を横展開していけるような仕組みづくりを進めている。取り組みを推進するため、社内のSlackチャンネルを利用してコミュニティを創設し、事例の展開や各種資料の共有、勉強会なども実施。ゆくゆくは利用者同士のコミュニケーションの場となるよう計画中だ。

代理店をも巻き込み、データドリブンな広告活動を加速

 ここまで、部内や社内のダッシュボード展開について言及してきた野村氏だが、「広告PDCAの業務変革には代理店の理解・協力が不可欠」と強調する。

 ボトルネックかつ重要ポイントだったのは、広告レポートのデータ取り込み稼働をどうするかという点。広告レポートをDatoramaに合わせたフォーマットに再編成する必要があったが、それを手動で行うとミスが起こりやすい。そこでレポート作成ツールとのAPI連携など、できるだけ効率よく自動的にデータを取り込める方法を現在も模索していると野村氏は話す。

 万能な方法があるわけではなく、メリットデメリットを取捨選択し、代理店と相談しながら最適な方法を取っているとのことだが、同社では代理店レポート統合に向けたトライアルにも積極的に取り組み始めている。

 今年7月には、博報堂と共にDatoramaへの完全移行を試みた。それまで週次レポートをエクセルでもらい、やり取りはメールで行っていたのを、Datoramaでのコミュニケーションに変え、コメントや改善履歴もUI上に残すことで複数ツールの行き来とコストを最小限に行った。

 結果的に、ダッシュボード定例を通して運用における認識のすり合わせと、意思決定が迅速にできるようになり、定例会の質の向上も実感しているという。報告レポートの作成における工数も約40%減少し、作成にかかる時間も10時間から6時間まで減ったそうだ。この結果から、代理店・広告主の両方にとって有益な業務改革ができると考え、他の代理店とのトライも開始している。

 野村氏は最後に、一連の取り組みに対する現在の感触と、今後の活動についてのさらなる意気込みを次のように話し、講演を締めくくった。

 「社内のみなさんや代理店など関係各所の協力のおかげで、広告PDCA活動が定着してきたことを実感しています。我々がビジョンとして掲げている『広告に関するデータをいつでも誰でも見られることを当たり前にする』を実現するために、この活動を当たり前のものにしていきたいと思っています。また、『代理店レポートの全自動化』『PDCA活動の全社標準化』は引き続き進めていきますが、これ以外にもまだできることはたくさんあります。今後もさらに取り組みを発展させて、データドリブンな広告活動を加速させていきたいです」(野村氏)

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この記事の著者

畑中 杏樹(ハタナカ アズキ)

フリーランスライター。広告・マーケティング系出版社の雑誌編集を経てフリーランスに。デジタルマーケティング、広告宣伝、SP分野を中心にWebや雑誌で執筆中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/10/14 09:00 https://markezine.jp/article/detail/40061

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