※本記事は、2022年9月25日刊行の定期誌『MarkeZine』81号に掲載したものです。
特集:すごいBtoB企業がやっていること
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─ 9割のBtoBメーカーサイトは「損失」を生んでいる。成果につながる製品サイトを作る5つの条件
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「メールでナーチャリング」は幻想?
——安藤さんは長年多数の企業のメルマガを見てこられました。BtoBのメールマーケティングの現状はどうでしょうか?
BtoCとBtoBで比較すると、BtoBのメールマーケティングはBtoCより5年ほど後れている印象があります。BtoCの場合は、メルマガから直接売上につながることが多く、また配信リストの量も数万件あるのが普通なので、効果がわかりやすく実感できるという側面があります。一方BtoBの場合、メルマガが直接売上を生むことは少なく、リストの量も平均して2,000〜3,000になってくる。仮にクリック率が1%だとしたら、LPへの誘導は20件です。どうしても数値のインパクトが弱く見えがちで、なかなか本腰を入れて取り組もうと思いづらいのかもしれません。
そもそも、BtoBマーケティングでどのようにメルマガ施策に取り組むとよいのか? という情報が世の中に流通していないことにも問題があると思っています。各企業、我流でやっていくしかない状況で、みなさん苦労されている印象です。
ただ、ビジネスパーソンでメールを使わないという人はいませんから、プロモーションとしてメルマガを使わない手はありません。人的リソースや時間、労力をかけず、効率的かつ効果的にメルマガを活用していくべきだと思います。
——BtoBのメルマガ施策というと、ナーチャリングの一環として取り組むことになるのでしょうか?
いえ、私は「メールでナーチャリングをするのは難しい」と考えています。その企業や製品にあまり興味のない人へ、メールで接触回数を重ねて情報提供を行うことで、少しずつ興味を持ってもらうようにし、最終的に問い合わせしてもらう——これがメルマガによるリードナーチャリングの理想的な形ですよね。ですが、正直、これは絵に描いた餅だと思うのです。
メールの開封率はBtoBだと10〜15%が平均値です。つまり、85%の人が開封すらしない。かつ、開封してもらえても、本文をしっかり読んでもらえるようなことはそんなにありません。これでナーチャリング(育成)できているかと言われると……難しいですよね。
BtoBマーケティングでメルマガが果たす役割
——では、BtoBマーケティングにおけるメルマガの目的・役割は、どのように考えればよいのでしょうか?
売上につながる可能性のある重要なタイミングを逃さないために、メルマガを定期的に配信し、接点・関係性を維持しておくこと。私は、これがBtoBマーケティングのメルマガの役割だと考えます。たとえば、ある課題が顕在化してきたから、製品について問い合わせをした。けれども、そのときは製品導入の決裁が下りなかった、あるいは予算の関係で他社のツールを導入することになった。それから1年後、組織体制が変わったり、売上が上がったりして、投資できる状況になったため、ツールのリプレースを検討し始めた。このタイミングで自社のツールを思い出してもらえるかが重要で、そのために必要なのがメルマガです。
——なるほど。ですが、実際にはステップメールで徐々に顧客の状況を引き上げていくといったイメージを持ってメルマガ施策に取り組んでいる企業が多いように感じます。
以前調査したことがあるのですが、ステップメールを組んで配信しても、最初から最後までメールを読む人は半分もいませんでした。半数以上の人は、断片的にしか見ていない。しかも、読者が1通のメールにかける時間は約7秒です。よって、毎回全部見てもらえると思って設計すると、失敗してしまう可能性が高いでしょう。 ちなみに、メルマガがどれくらいしっかり読まれるかは、発信者である企業や団体と読者の関係性の深さによって決まります。たとえば、極端な例ですが、好きなアイドルグループの会報がメルマガで来たらどうでしょう?
大多数の読者が喜んで読みますよね。一方、ネットショップからのセールや新商品の案内がメルマガで来た場合、好きなブランドだったらしっかり読むかもしれませんが、興味がなければじっくり読むことはないはずです。読者とのつながりが深いことはあまりないBtoBではなおさらです。人の可処分時間はある程度決まっていますし、その多くが各SNSに取られていっているので、メルマガ1通あたりにかける時間がどんどん短くなっていくのは自明の理ですね。