※本記事は、2022年9月25日刊行の定期誌『MarkeZine』81号に掲載したものです。
特集:すごいBtoB企業がやっていること
─ 会社全体で“共通言語”を持つことが第一歩 「BtoBマーケティングの偏差値」を上げるために必要なこと
─ NECが挑戦する営業・マーケティングの融合とデジタルシフト 2年間の取り組みで実感する変化とは(本記事)
─ グループ横断でシナジー創出へ。業界の地位向上も目指すパーソルの「愛される」BtoBマーケティング
─ 9割のBtoBメーカーサイトは「損失」を生んでいる。成果につながる製品サイトを作る5つの条件
─ すごいBtoB企業はここに力を入れている!メルマガ担当者が知っておくべき基本事項
─ Salesforceがイベント企画で大事にしている5つのこと
2019年より営業DXを推進、進化を続けるNEC
——NECは2019年から営業のDXに向けて、デジタルマーケティングとインサイドセールスを活かした新しい営業手法や人材育成に取り組まれています。そして昨年、その取り組みが「NIKKEI BtoBマーケティングアワード2021」優秀賞を受賞されたとのことで、詳しいお話をうかがいたいと思います。まず、このプロジェクトを推進したIMC統括部とはどのような部門なのか教えてください。
東海林:IMC統括部の担う業務は非常に多岐にわたっていて、BtoBマーケティングで必要なアセットをENDtoENDで統括する部門です。具体的にはデジタルマーケティングにおけるコンテンツマーケティングを進めるチームや営業のデジタルシフトを推進するチーム、デジタルマーケティングやデータの活用基盤を提供するチーム、VOC(Voice of Customer)分析チーム、またWebサイトやデジタルイベントなどで利用するアセットを提供するチームがあります。また、こうした活動をコミュニティ化したり、お客様との共創を加速したりするようなチームもあります。つまり、リアルからデジタル、基盤やデータ分析など多岐にわたる機能を持っている部門となります。
東海林:アワード受賞時にはコーポレート部門に所属しておりましたが、今年度から組織体制が変わりまして、現在は「デジタルビジネスプラットフォームユニット」というNECのDXを全社横断でけん引するユニットに所属し、ビジネスに直結するマーケティングにフォーカスし、全社で実行しております。
——ありがとうございます。続いて、中島さんの現在の所属とミッションを教えてください。
中島:私は現在IMC統括部内のデジタルマーケティング基盤・データ分析グループに所属しています。昨年度はデジタルマーケティング/コンテンツマーケティングの推進と、営業デジタルシフトの二足のわらじでプロジェクトに参加していましたが、今年からはその取り組みを通じて見えてきたデジタルマーケティング基盤やデータ活用における課題改善に取り組んでいます。
デジタルマーケティング基盤は経営基盤にもなり得る重要なインフラです。昨年度まではマーケティング単体で見ていたのですが、今年からは情報システム部門にあたるコーポレート・トランスフォーメーション部門も兼務し、プロジェクトを進めています。
マーケティング・営業業務で直面していた課題とは
——NECの取り組みについて詳しくおうかがいします。マーケティングと営業の意識を合わせていくために、2019年度から人材の育成面の整備や新しいやり方の確立を進めてきたそうですが、そもそも当時どのような課題からこの取り組みを始めることになったのでしょうか。
中島:元々2019年以前から、マーケティング内にインサイドセールスチームを立ち上げ、デジタルマーケティングで獲得したリードをインサイドセールスにつなげ、商談を発掘する活動を行っていました。しかし、よく「マーケティングがリードを作っても営業が受け取らない」ということが取り沙汰されますが、正直なところ当社にもマーケティングと営業間の“壁”問題がありました。
一方、営業部門側では、営業の生産性向上や、労働人口減少にともなう将来的な営業担当者数の減少が課題でした。営業活動を今まで以上に効率化したいというニーズが営業部門側にあったため、マーケティングだけでなく、営業側にもインサイドセールス部隊を立ち上げていくことで、より営業プロセスを回しやすくなるのではという仮説の下、2019年に2つの営業部門とトライアルを始めました。
そこで気づいたのが、営業プロセスの変革と、インサイドセールスのスキルの重要性です。営業現場の人員には、インサイドセールスの経験がないので、今後活動を広げていくためにまずは教育メニューの策定・整備を進めました。
そのタイミングでコロナ禍となり、顧客接点が減少する中、この新しい取り組みを一気に展開することとなったのです。
——トライアルでインサイドセールスを営業活動に取り込み、実際に営業の方も効果を実感されたということでしょうか。
東海林:トライアルをした2つの部門は、コロナ禍になったときのデジタルシフトに対する対応や理解が非常に早く、実際に対面営業ができない中、新規商談発掘するなど成果が出ています。このような取り組みを他の営業部門と共有できる社内コミュニティも立ち上げたことで、営業が成功事例やチップスを話すと、周囲も感化され「うちももっと取り組もう」というモチベーション向上につながっています。