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BtoBマーケティングの開拓者たち

BtoBのテレビCM施策の基本を押さえる

テレビCM制作のオリエンで重視した4つのポイント

 どんなタレントを起用して、どんなクリエイティブを作るかを検討する前に、まずはテレビCMの目的や各施策に持たせる役割の整理に長い時間をかけました。TOKIUMは仕組みづくり、定量データを使ったPDCAを得意とする会社です。前項のような考え方を経営陣、社内のメンバーにインストールするために、数ヵ月をかけて整理しました。

 その上で、広告会社へのオリエンテーションの際に重要視したのは下記の4つです。

1、社名およびサービス名の指名検索がテレビCMによってリフトすること

2、社名およびサービス名の名称認知が獲得できること

3、訴求するサービスのメリットを端的にわかりやすく表現すること

4、電子帳簿保存法の改正やインボイス制度の開始に企業が対応しなければいけないが、その期限が差し迫っていることを伝えること

 上記の1、2のポイントに関しては、目標設定として弊社側で話し合い、決定しました。これらを決めること自体はスムーズに進んだのですが、目標に対してぶれることなく、多岐にわたる多数の施策を短期間で検討・実行していくことは非常に難度が高かったです。

 たとえば、テレビCM内で使用するコピーを選ぶ、起用するタレントを選定する等制作の過程でも何度か立ち止まって議論する場面がありました。また、テレビCMを放送する番組や時間帯を選ぶ際には、視聴率や含有率、放送局ごとの特性など複数の変数が存在します。判断がぶれそうになったときには、しつこいほど原点である目標に立ち返り、指名検索のリフトと認知率の向上を達成するためにはどの方法を選択するのが最善なのかを、徹底的に議論しました。

訴求したいメッセージをクリエイティブに落とし込む

 3、4のポイントに関しては、テレビCMの具体的なクリエイティブを例に解説します。

3、訴求するサービスのメリットを端的にわかりやすく表現すること

4、電子帳簿保存法の改正やインボイス制度の開始に企業が対応しなければいけないが、その期限が差し迫っていることを伝えること

 まず、TOKIUMインボイスのメリットを端的にわかりやすく表現することについてはどの言葉で表現するのか、社内でも議論が紛糾し最後まで悩みました。下記は、メリットとして訴求するか否かを検討した項目の一部です。

「受領代行」:請求書を代わりに受け取るところから対応する

「リモートワーク推進」:リモートワークの妨げとなっていた請求書受領のための出社が必要なくなる

「請求書管理上のミスを減らす」:業務フローがオンラインで完結し工程が減るので、申請・承認時の漏れやミスが減る

「ペーパーレス」:取引先から送付される請求書に紙が残り続けてしまう問題を、TOKIUMが代わりに受け取ることで解決する

「法改正への対応」:改正電子帳簿保存法やインボイス制度に準拠した請求書管理ができる

 このうち、私たちが最終的にメリットとして訴求することを選んだのは「ペーパーレス」でした。受容性調査の結果、上に挙げた他の項目よりも「ペーパーレス」という言葉に対する反応が良かったことが理由です。

 また、リモートワークも法改正への対応も、お客様が抱える課題はペーパーレス化することで解決できる点が挙げられます。さらに、類似サービスと比較した際の優位性でもある代行受領で実現する価値のひとつが、紙の請求書が会社に届かなくなることなので、テレビCMで訴求する最も伝わりやすいメリットとして適切だと判断しました。

 テレビCMのクリエイティブでは、東京03の角田晃広さんに「ペーパーレス化、しないとね?」と絶妙なトーンで経理の現場の大変さを訴えかけてもらうこととなりました。「TOKIUMインボイスならペーパーレス化が可能です!」とストレートトークで表現した場合と比較して、現場が本当に困っている心情も同時に表現することで見る人にとって共感しやすい語り掛け(提案)ができました。

TOKIUMインボイス「発足」篇より
TOKIUMインボイス「発足」篇より

 次に、電子帳簿保存法の改正やインボイス制度の開始への対応期限が差し迫っていることを表現することは、市場環境を鑑みて、テレビCMで訴求しなければならない必須条件でした。しかし、営業(TOKIUMではインサイドセールス・フィールドセールスに分かれる)へのヒアリングから、法対応に対しての意識は企業によってまちまちで、やらなければいけないことと認識しながらも業務が増えてしまうことへの心理的障壁すらあるということが明らかになりました。

 そのため、改正電子帳簿保存法とインボイス制度に準拠していることはテロップで表記しながら、ナレーションやセリフでは触れず「至急、経理をDXせよ!」というメインコピーで対応を急がねばならないことを表現することにしました。法改正への対応は、必須ではあるもののそれ自体が企業の生産性を高める業務ではありません。

 さらに、法改正より上位概念であるDXを目標として掲げることを、特撮劇の指令のようなナレーションで謳うことで、企業活動が前進するイメージを持たせました。音楽やサイレンの警告音などで中盤まで焦燥感を演出しながらも最後には明るく前に進むイメージで締めくくることで、恐怖訴求ではなく、あくまでビジネスパーソンへの応援メッセージを込めています。

 オリエンテーションの時点で、制作をお願いするクリエイティブディレクターにもTOKIUMインボイスのメリットや弊社として伝えるべき内容を共有しました。正直なところ、判断に迷っているポイントも共有しながら議論を深めていったので、実制作の工程で細かな表現にも私たちの意向を反映することができたと自負しています。制作に携わってくださった広告会社、制作会社、すべての制作スタッフ、キャストのみなさんに、この場を借りて感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。

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多面的なメディアプランニング指名検索に対する残存効果も明らかに

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この記事の著者

鎌倉 知紗(カマクラ チサ)

株式会社TOKIUM ビジネス本部 マーケティング部
1990年生まれ、高知県出身。立教大学卒業後、2013年に新卒で読売広告社に入社。BtoB領域を中心にマス広告のプランニング・制作、イベントの企画運営など統合コミュニケーション支援に従事。2016年より畜産IoTスタートアップで一人目の広報・宣伝として奮闘。2022年3月より...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/09/29 09:30 https://markezine.jp/article/detail/40081

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