社内理解を得るため「まずはgiveを」
様々な企業のマーケティングを支援するSAPの高橋氏は、丸亀製麺のデータ活用に対し「外食業界でここまでデータを駆使しながらオペレーションを回している企業は多くありません。SAPの目指す世界観をすでに作られていると感じます」と述べる。
丸亀製麺が現在のデータドリブンマーケティングを本格的に始めたのは、南雲氏が加わった4年半ほど前から。当時の推進メンバーは南雲氏を含めてわずか4人。マーケティング「部」ではなく「課」だったという。南雲氏は自ら「これからは全部可視化して数字で語れないとだめだ」と提案し、勘と経験から脱却したマーケティングを推進してきた。
ここで持ち上がるのは、経験が豊富な人ほどデータよりも経験に頼りがちなため、データドリブンマーケティングに対する理解が社内に広まらないという問題だ。この問題に向き合うため、南雲氏が心がけたのは「最初にgiveすること」。マーケティング部門が各部門の課題を率先して解決しながら、データに基づくマーケティングが役に立つこと・結果に結びつくことを社内で証明し続けた。
そしてもう1つの問題が、データで説明すればするほど社内で評論家扱いされること。この問題に対して、南雲氏は「感性派とデータ派、相手によってコミュニケーションを使い分けて対応している」と話す。感性派のメンバーには感性の方からマーケティング効果を示し、その裏に実はデータが使われていることを伝えたそうだ。地道な取り組みを続けた結果、丸亀製麺にデータドリブンマーケティングが定着。今では20名規模のマーケティング組織に拡大した。
72のカスタマージャーニーをプリセット
丸亀製麺のマーケティングは順調そのものに見えるが「まだまだ道半ば」と南雲氏。「一人ひとりのお客様にパーソナライズした他にはない感動体験を提供するため、人がカバーできないところはデジタルで対応するなど、両者のバランスを作るのが大変です」と話す。
ここまで丸亀製麺の取り組みを聞いた本間氏は「データをきちんと集め、使える状態にするのも1つのハードル。ここに至るまで、相当大変だったのでは」と推察する。
高橋氏も「マーケティング部門の人数が限られている場合、実現したい顧客体験の理想像はあっても、なかなかそこに人手や時間、予算をかけられる企業は多くない」と続ける。解決方法の1つとして高橋氏が提案するのは、2022年10月にSAPが日本でリリースする予定の「SAP Emarsys Customer Engagement」だ。
「SAP Emarsys Customer Engagementは、マーケターの時間を効率化するツール」と高橋氏。72パターンものカスタマージャーニーをプリセットしているため、膨大な工数がかかるカスタマージャーニーの作成時間を大幅に削減できるという。高橋氏は年間160万円~という価格帯でコアライセンスが使える点にも触れ、「鉄板のジャーニーでスモールサクセスを得ていただきたい」とソリューションに込めた思いを語る。
2022年11月で創業22周年を迎える丸亀製麺。南雲氏は「企業の盛衰は20年周期で繰り返します。向こう20年も生き残るためには、競合の範囲を『外食チェーン』から『感動体験を提供している企業』に拡げてマーケティングに取り組んでいきたいです」と話す。
本間氏は「本日紹介した丸亀製麺さんの戦略をヒントにしつつ、SAP Emarsys Customer Engagementのようなソリューションをうまく活用していただきたい」と述べ、セッションの結びとした。
SAP Emarsys Customer Engagement
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