第三者発信のビジュアルを戦略的に活用
ここまでは主にSNS上におけるワークマンの戦略を紹介してきたが、ワークマンは加えて、アンバサダー発信の情報を自社サイトに組み込むことに力を入れている。
「ブランドとユーザーの間に様々なタッチポイントが存在し、いつ誰が自社サイトを訪問してくれるかわからない現代において、いかにオウンドメディアで商品を具体的に伝えられるか。またブランド側が伝えたいポイントと、ユーザーが確認したポイントも異なります。ワークマンではその点、商品開発と同時にアウトプットも考えています」(井上氏)
井上氏が例に出したのは、ワークマンのアウター。商品カタログの写真だけでは伝わらないが、釣りをしている女性、バイクに乗る女性、焚き火に当たる男女と、それぞれのシーンの写真が詳細ページに用意されている。
「カタログの写真だけだと、これは女性が着られるのか、ユニセックスなのかわかりません。テキストで書かれているのかもしれませんが、ウィンドウショッピング感覚で閲覧しているユーザーは、文字情報や細かな注意事項まで読まないことも少なくありません。しかし想像できるビジュアルが1枚あるだけで、ユーザーには直感的に伝わります。ワークマンではこのように、多角的に商品の魅力を伝えようとしても自社だけでは限界があることを知り、第三者発信の情報を活用しているのです」(井上氏)
自社のリソースだけでコンテンツを制作するのは、タッチポイントやユーザーのニーズが多様化している現代において、難しい部分もある。そこでワークマンは、UGC(User Generated Contents)を活用することで多様化に対応。同社はvisumoが提供するサービスを活用し、自社サイトにInstagramの発見タブを思わせる「workmanフォト」というコーナー設置。そこではユーザーが発信した写真を閲覧・回遊でき、商品情報や関連商品への紐づけも行っている。
ビジュアル戦略を軸に、自社サイトのコンテンツ充実化を
では自社でアンバサダーを選定し、施策を成功に導けばいいのだろうか? ワークマンがアンバサダーを選ぶ際は、ワークマン愛があることを大前提とし、様々な分野に特化したユーザーを選定しているという。
「ブランドとユーザーとの間に、アンバサダー発信というワンクッションを挟みます。そこで生まれたビジュアルコンテンツをUGCの活用としてオウンドメディアに展開し、他のユーザーの購入検討にも生かせるようにコンテンツを整備していく。このやり取りを通じてブランドとユーザーがつながり、ファンマーケティングも推進されていきます。自社を取り巻くデジタルコンテンツを惜しみなく活用する構図ができあがっているのが、ワークマンなのです」と井上氏は成功の秘訣を力説した。
ユーザーにとって、デジタルコンテンツであるWebサイトは、商品やサービスを知るために必要不可欠な場所だ。そして従業員にとっても、ナレッジをシェアするための良い場所となりうる。そうした観点から、Webサイトのコンテンツを充実させる企業も増えているという。「ビジュアルデータを活用する際、自社のリソースだけではなくvisumoを使い、ほかのソリューションとも連携できると、デジタルコンテンツをさらに活用できるのではないでしょうか」と井上氏は語り、同セッションを締めくくった。