まずはZ世代のメインストリームを理解することが大事
さて、SNSファーストに思考を切り替えていくために、まず必要なのは「Z世代の情報行動を徹底的にリサーチすること」です。そのために、下のシートを使って、Z世代の情報行動を棚卸することから始めます。

クライアント向けにワークショップを行う時、私はよく「周囲にいるZ世代の1日の情報行動をヒアリングしてきてください」とお願いします。この時、重要なのは、実は“発見”ではなく、“腹落ち”です。Z世代の情報行動について“発見”することが目的なのではなく、ヒアリングする過程でZ世代の実態をカラダに馴染ませることが目的なのです。
ポイントになるのは、SNS、特にInstagramやTwitter、TikTokが情報行動の中心にあり、テレビなどのマスメディアやWeb検索がサブであること。Y世代以上も当たり前のようにSNSを活用しているとはいえ、「SNSが情報源のメイン」にあるとは言えないでしょう。
Z世代とY世代以上では、「日常的にファーストコンタクトで見るもの」が、コペルニクス的転回のように、逆さまになっています。実際はテレビが好きなZ世代もいて、このようにステレオタイプ的なZ世代像を当てはめるのも乱暴な部分はありますが、まずはZ世代のメインストリームをインストールするのがよいでしょう。
実際に、SNSが情報源の中心にあるZ世代の方にヒアリングをすると、「家にテレビはない。友だちの家に行った時にテレビを見た記憶はある。YouTubeをやっていないお笑い芸人の千鳥のことはあまり知らない。が、Instagramで自分が参考にしている地元のマイクロインフルエンサーについては詳しい。テレビは見ないが、ネトフリのドラマはよく見る」なんて話をよく聞きます。
「Z世代の情報行動」と「自社のコミュニケーション」を比較してみる
次に、自社の商品・サービスとZ世代の行動とのギャップを明らかにします。
はじめに、現時点で自社商品・サービスがどこでどんなタッチポイントを有しているかを、「普段の情報行動」「検討/来訪(来店)」「購入/利用」の3つのフェーズで書いていきます。それに対して、自社の商品・サービスのカテゴリにおけるZ世代の情報行動がどのようになっているかを書き出していきます。最近はInstagramのまとめ投稿やランキング投稿が各ジャンルで定番化しているので、そういった投稿の中で情報に触れているかもしれませんし、「普段の情報接触はほぼない/接触するタイミングや場所がない」という棚卸もあり得るかもしれません。

たとえば、Instagramでハッシュタグ検索をしてみると、「#化粧水64万件」「#シャンプー204万件」と、シャンプーのほうが情報が出回っているようです。他方、「#歯磨き粉12.4万件」「#柔軟剤6.8万件」と、このあたりの日用品は情報の回り方は少なめですが、柔軟剤より歯磨き粉のほうが情報量が多いというのはおもしろいですよね。この情報の総量を増やしつつ、シェアも獲得する、というのがZ世代ターゲットのシェアオブボイスの発想として重要です。
こうしてギャップを見ていくと、普段行っているマーケティングコミュニケーション活動とZ世代の情報行動とに生々しい乖離があることがわかってくるのではないでしょうか? 「SNS施策“も”やってるよ」ではなく、「SNS施策を“メイン”にすべき必要性」に改めて向き合うことになるのではないでしょうか?
また、プロダクトそのものの企画・設計や、プロダクトの見せ方など、Z世代の行動にマッチしきれていない部分も再度認識できると思います。