CRMの要素として忘れてはならない「製品・サービスの質」
ただし、LTVを高めるには顧客が製品やサービスに満足し、リピートしてくれることが大前提だ。この点について池田氏は「ユナイテッドアローズのCRMは『商品の使用体験』と『自社の接客体験』」と説明する。
同社では実店舗だけでなく、アプリやWebサイトなどのチャネルも「店舗」と定義している。チャネル間でコミュニケーションがちぐはぐであれば、リピート率向上にはつながらないからだ。さらに池田氏は、顧客ロイヤルティ向上は会社全体の共通理念であることを強調する。

「たとえば、コーディネートの提案が顧客のTPOに合わせたものになっているか、試着室の掃除が行き届いているかといったことも接客体験では重要になります」(池田氏)
これを受けて道上は、「企業はLTVを向上させるため、広告を出したりメールを打ったりと様々な施策を考えます。しかし、製品・サービスの質や接客といった根幹を振り返り、『これでよかったのか』を確認することはとても大切です。こうした基本がCRMに関連し、顧客満足度につながると考えます」と参加者に推奨した。
KPIツリーの分解という「健康診断」で全体最適を図る
続いて池田氏は、ユナイテッドアローズのCRMで重要視する指標を解説した。
同社では維持率やリピート率(F2)、新規会員数をKPIとし、顧客ロイヤルティ(LTV)をKGI(経営目標達成指標)に設定している。最終目標は生涯顧客化だ。
これについて池田氏は、「ロイヤルティプログラムの場合、1年単位の売上で翌年のステータスを決めがちです。もちろん、マーケティングの施策としては一つの手法ですが、会社全体として顧客と長くお付き合いをしたいという観点から“生涯”という単位で考えています」と説明した。
こうした考えを基にKPIツリーを分解し、現状把握と全体最適化に務めているという。KPIツリーで可視化すると、どこか1ヵ所だけがよくても全体としてバランスが悪い部分が詳らかになる。池田氏はKPIツリーの分解を「まるで健康診断」と表現する。

また、同社では自社ECとオムニチャネル、そして店舗は稼動会員数をそれぞれ分割して管理している。詳細を見ると、オムニチャネルの会員はEC会員や小売(店舗)のみを利用する会員と比較し、購買金額や購買回数、購買品数が3倍以上高い。そうした中でキードライバー(目的達成に強い影響力を発揮する変数)を見つけ出し、次の施策に活かす対策を講じている。
