支援会社の転職でありがちな落とし穴
野崎:ブランディング案件を多く担当しているとのことですが、どのようなチーム体制で動いているのでしょうか?
小野原:HDIでは営業周りを担当しているビジネスデザイン本部と、SEMやSNS広告などの広告運用に関するプロが集まるパフォーマンスデザイン本部の2つの組織に分かれています。この2つの組織から案件ごとにチームを組成し、ワンチームになってどのようなプランがベストか議論しながら提案内容を固めています。

野崎:やはり大型案件に携わるので、個人戦ではないですよね。参考までに、デジタル広告で独立志向が強いマーケターは、このようなナショナルクライアントをチームで担当する業務よりも、中小案件で個人完結させるスタイルでキャリア形成したほうが近道になることが多いです。
ちなみに、特にダイレクト領域のデジタル施策だけに携わっているマーケターからのキャリア相談で、「4マス媒体やテレビ×デジタルに関する業務に関わりたい」という内容が多いのですが、そのチャンスもHDIで働く場合は、「ある」という認識ですよね?
小野原:博報堂と一緒に動く際に、屋外広告の予算配分やマスとの連動施策に関して議論することがあるので、テレビを含めた4マス媒体×デジタルに関わるチャンスは十分にあると思います。
デジタル専業の代理店から総合広告会社に転職すると、デジタルのスペシャリストとしてデジタルに関する業務だけ担当するケースもあると思います。一方HDIの場合は、テレビCMの案件などに関わるチャンスもあり、4マス媒体の基礎知識は身に付いていくので、デジタルを軸にしながらも4マス媒体の活用にも興味があった私にはフィットしました。
野崎:まさしく今の小野原さんのお話は転職する際の落とし穴です。新しいスキルの拡充を求めて転職したのに、年収は上がったけれども前職と同じ業務内容を担当しているだけになって、転職を繰り返してしまうというパターンは散見されます。転職を通じて自身が狙ったキャリアが会得できるオファーかの見極めは重要です。
新聞社からデジタル広告の世界へ。その理由は?
野崎:それでは、そんな小野原さんがこれまでどのようなキャリアを歩んできたのか振り返っていきます。就活はどんな業界を志望されていたのですか?
小野原:学生時代から広告やマーケティングに興味がありましたが、新卒で入社したのは新聞社でした。新聞社では広告部門に配属され、広告営業を2年半ほど担当していました。
野崎:新聞広告のセールスからキャリアがスタートしているのですね。まだ、3年目というタイミングで転職しようと決意したのには、どのようなきっかけがあったのでしょうか?
小野原:新聞の広告でできることは一通り経験したこと、自社媒体以外のメディアも活用して企業を支援したいと思ったことがきっかけですね。最初は広告枠や記事タイアップの提案などを行ってきて、自社媒体の提案だけずっとやっていっていいのだろうかと思っていました。新卒の就活時代から広告業界には興味があり、テレビやデジタルなど他の媒体も扱えるところに行きたいと思うようになりました。
そして、現在の経験をもとに総合広告代理店に入社すると新聞担当になって似たような仕事になるのではと思い、デジタル広告を扱う支援会社に絞って転職活動を始め、縁があったのが当時の博報堂DYデジタル(現在はDACに統合)でした。
野崎:小野原さんのキャリアの作り方でマネして欲しいのは、転職した先で得られるキャリアをしっかりと予見されている点です。経験者採用の転職先が求めるのは、当然ながらこれまで培ってきたスキルを活かした仕事になりやすいので、転職カードを切っても同じような仕事になりがちです。
小野原さんはポテンシャル層の採用意欲が高いデジタル系企業を意図的に狙いました。その結果、新聞社での広告営業経験を活かしつつ、現在のブランディング案件におけるデジタル領域のスキル拡充につなげていらっしゃいます。