縦型起点でクリエイティブを設計
――エッセンシャルでは、他にどういった取り組みを行いましたか。
横山:2022年9月にエッセンシャル ザ ビューティというシリーズから新発売された、「ウォータートリートメント」と「バリアトリートメント」という2つのトリートメントアイテムについても、Instagramを含むWeb広告の制作を手がけました。こちらもエッセンシャルflatと同様に、Instagramのリールやストーリーズでの配信を意識して、縦型に最適化した動画にしました。また、説明的ではなく直感的に商品を理解できるようなクリエイティブにしています。
鈴木:Metaとしても何年も前から、「Instagramでは縦型動画を用意してください」とお伝えしてきましたが、企業様がプロモーションで取り組むにはなかなか難しいのが現状です。どうしても動画広告はテレビCMの流用やついでに撮影するという場合が多いので、横型動画が多くなります。しかし今回は、博報堂様より絵コンテの段階から縦型でご提案いただいたのも、効果が出た一因だと思います。それにしても、よく花王様は縦型動画の撮影を受け入れてくださいましたね。
横山:確かにそうですよね。SNSに特化し、プラットフォームや配信面ごとの特性を理解した上で最適なクリエイティブを制作することに専門的に取り組むのは、なかなか難しいです。ですがプランニング段階からSNS向けに特化しないとユーザーの芯は捉えられないと思っています。
デジタルでは年々新しいものが出てきて潮流もめまぐるしく変化するので、チャレンジ精神を持って挑戦し続ける必要があります。花王様が、チャレンジングなことにも前向きに取り組んでくださる企業だからできたというのもあります。また提案の段階から、InstagramをはじめTikTokやTwitterなど各プラットフォームの特性とターゲットの向き合い方を、とことんハックし腹落ちをしてもらいました。その上で改めて縦型動画に注力したプランニングと、動画の構成まで作り分けをする必要性を伝え、絵コンテに落とし込んでいきました。
時代・媒体・インサイトに沿ったクリエイティブを
――今後の展望をお聞かせください。
横山:生活者に広告が嫌われていることが当たり前になっている一方で、多くの人が広告から情報を得ているという声もあります。今回のように、時代に合わせ、配信面のUIやUXも考慮し、ユーザーが受け取りやすい語り方にすることで、広告が再び“ラブレター”として機能するのではないかと思います。
また、現在クライアントとプラットフォーマーとクリエイターと我々という4者がそれぞれの領域のプロとして意思決定を行う「分散型」の制作手法にも力を入れています。そこに参画してもらえるクリエイターもどんどん輩出していきたいと考えています。
鈴木:2016年にストーリーズをリリースした際に、「これはどうなの?」というお声もありましたが、今ではユーザーにも企業やブランドにも受け入れられ、広告配信面としてもたくさん使っていただいています。2020年にリリースしたリールも、今後そうやって活用していただけるようになっていくのではないかと思っています。
博報堂様とは他にもいろいろな取り組みをしているので、ともに今回のような先進的な事例を作っていき、多くのクライアント様に役立てていただけたらと考えています。