グローバルカンパニーの自覚を強くしたコロナ禍
鈴木:コロナ禍に突入して丸3年が経ちます。こんなに長引くとは誰も予想していなかったはずです。御社ではどのようにコロナ禍を迎えたのでしょうか。
風口:最後にオンサイトイベントを開催したのは2020年2月13日で、状況が急展開する直前のタイミングでした。イベントを開催した1週間後には、社員のほとんどが自宅から業務にあたることとなったのを覚えています。
風口:少し経ってから、この状況が想像以上に長期化する兆しや、社員の心身に影響を及ぼす可能性が明確になったんです。メンバーシップマネジメントにおいても「どのようなコミュニケーションやプログラムが必要なのか」といったことがグローバルで議論されるようになりました。コロナ禍に入って最初の数ヵ月は、とにかく社内の環境を整えることにフォーカスしていましたね。
また当初は、グローバルカンパニーとして動いている感覚をより強く持った時期でもあります。国によって状況や文化は様々です。感染拡大が特に進んでいる国に対して「どう支援できるか」という議論を全世界で尽くしました。米国本社の考えを全世界に伝えつつ、各国に合ったメッセージを対外的に出すことが必須であり、そのトライができたと思います。
オンラインで最も離反が少ない時間は16分
鈴木:コロナ禍で具体的にどんなことが変わりましたか?
風口:大きく変わったと感じるのは、お客様の行動ですね。コロナ禍に入る以前から、営業担当者が接触するより先にお客様自身で情報収集をされているケースは日本でも増えていましたが、コロナ禍によって一気に加速したと感じます。
そのため、情報を必要とする人に先回りしてきちんと届けなければ購買につながらないようになりましたし、デジタルありきの世界になったことによって、わざわざ足を運んでもらうことに対するハードルが上がりました。人の感情を揺さぶる体験や、他社で提供できない体験を提供するところに私たちマーケターのミッションがあるとするなら、期待値はかなり高くなったと思います。
鈴木:そうですね。以前ならオンラインコミュニケーションは、どちらかというとオフラインのコミュニケーションを補完するものといった位置付けでしたが、今では逆転し始めています。オンラインでまかなえるコミュニケーションと、オフラインでなければいけないコミュニケーションの区別が掴みきれていないマーケターはまだまだ多い印象です。
風口:確立された手法は、おそらくまだ誰も知らないはずです。「コロナ禍以前の状態に完全に戻ることはない」という前提に立ち、今後提供すべき体験を、仮説を立てながら模索し続けているところだと思います。
鈴木:コミュニケーションの変化について考えるとき、僕が思い浮かべるのはカンファレンスです。最近は複数のウェビナーを同時視聴する猛者もいる中、主催側においては「いかにフォーカスを集めるか」が大切になってきました。人のフォーカスを集めるために、御社で工夫していることはありますか。
風口:工夫していることの一つに、時間があります。デジタルの世界に慣れた人たちは、自身にとって有用か否かを判断するまでの時間が短くなっていると感じるためです。当社では、オンラインで最も離反が少ない時間を16分と仮定し、人数が多いパネルディスカッションなどを除いて基本的に15分以内に収まるようイベントを設計しています。
鈴木:集中して聞いてもらうとなると、そのぐらいの時間になりますね。