“映え”にくい虫ケア用品をどう訴求するか
MarkeZine編集部(以下、MZ):初めに自己紹介をお願いします。
稲積:アース製薬のマーケティング部門で、SNSやWebサイトを通じた商品プロモーションを企画・実施しています。現在入社7年目で、以前は広告会社に在籍していました。
福間:テテマーチでプランナーを務める福間です。SNSを軸とした様々なプロモーション企画や戦略を企業様向けに提案しています。アース製薬様とのお取り組みが始まったのは、1年ほど前からです。
MZ:まずはアース製薬のマーケティング戦略からうかがえますか。
稲積:当社ではテレビCMなどのマスマーケティングを中心に行ってきたのですが、ここ10年でデジタル化が進みスマホが普及したことを受け、最近ではSNSにも注力していました。商品によって異なるものの、当社の主なコミュニケーションターゲットは30~40代の女性です。この層の方々がよく利用するInstagramは特に無視できませんでした。
Instagramの公式アカウントを開設して早速運用を始めようとしましたが、ここで1つ懸念が浮かびました。「インスタ映え」という言葉が流行ったように、Instagramは写真中心のSNSです。一方、当社のメイン商品は映えさせることが難しい虫ケア用品。虫のイラストが描かれた商品パッケージに抵抗を示す方も多い中、Instagramで虫を出さずに虫ケア用品を訴求するのは不可能だと考えました。しかし、最近は“映え”を重視する流れが変わりつつあることを知り、映え以外のアプローチをテテマーチさんに相談させていただきました。
「アース製薬、やってるな」と言われる企画に
福間:虫を映さないことと、アース製薬様の他の商品も知ってもらうきっかけを作ることが我々のミッションでした。アース製薬様は「ごきぶりホイホイ」のような虫ケア用品だけでなく、「モンダミン」や「バスロマン」など、幅広いジャンルの商品を提供されています。加えて、稲積さんからは「『アース製薬、やってるな』と言われる企画を作りたい」という強いご意向もうかがっていました。
稲積:Instagramの企業公式アカウントとしては後発にあたるため、とにかくインパクトを持たせたかったんです。チャレンジを奨励する社風が後押しして、臆することなく攻めの企画に打って出ることができたと思います。
MZ:そうして生まれた企画が「もしもゴキブリがInstagramをやったら」ですか。
福間:企画で試行錯誤していたときに「〇〇が××だったら」というフォーマットが思い浮かんだんです。ゴキブリがインスタグラマーだったら、地面に這った視点から日常の風景を投稿するかもしれないなと。ゴキブリ目線の投稿ならゴキブリ自体が画像に写ることはないため、当初の条件はクリアできます。
さらに、ゴキブリが人家に迷い込んだ設定にすれば、オーラルケアや入浴剤、掃除用品など、アース製薬様の他の商品も映してPRすることができると考えたんです。主人公のゴキブリが住宅内を冒険するストーリーのほか、投稿数や各投稿に添える日記風のキャプションまで決めてからアカウントを開設していただきました。