「人」の魅力をEC上で発信することで創る、新たな顧客体験とは
1つ目の、「見て、店舗に行く情報」について。ECサイトには、商品の見た目や特徴、価格など、すべて情報が記載されている。
加えて、アダストリアでは、リアルな1,300店舗のそれぞれにいる店舗スタッフの情報発信にも注力。4.000人以上の店舗スタッフが、デジタル上に自由にライフスタイルを発信していく「STAFF BOARD」というコンテンツを作り上げ、「人」の情報もECサイト上に掲載していく取り組みを行っている。
自社ECサイトに画像とテキストで投稿するだけではなく、ライブ配信などで、インタラクティブに商品の特徴を感じてもらうことなどを増やしているのだ。こうしたことを通してECサイト上で商品を見てリアル店舗に行くのと同じような比率で、店舗スタッフからの情報を見て店舗に来るケースが増えているという。

「『○○さんのスタイリングを見ました』『SNSで知りました』など、そのスタッフが働いている店舗にお客様がわざわざ足を運んでくださることが実際にあります。そうやってスマホで見たスタッフに店舗へ会いに来て商品をご購入していただくことは、とてもECサイトだけでは提供できない体験価値だと思っています」(田中氏)
ECサイトには商品情報だけでなく、他にも様々な情報を込めることができる。その視点で自社ECサイトに出すコンテンツを考えていくと、今後も様々な可能性が拓けてくると田中氏は捉えているのだ。
ECのデータは、商品開発にも店舗設計にも活かす
2つ目の「Webとリアルをつなぐデータ」で田中氏は、データを商品開発に活かす視点を紹介した。アダストリアでは自社ECサイト中にお客様レビューを集めており、そのデータが年間50万件ほどたまっている。これを見ていくと、商品開発に活かせる情報が詰まっているのだ。
実際に分析チームがレビューコメントのテキストマイニングを行い、傾向値をまとめることで、ヒット商品が生まれる事例が出てきているという。データ活用の大きなメリットといえる。

「ECはCVRを求めて売上高だけ上げればいいわけではありません。“お客様の声”というデータを活用し、プロダクトに活かせないか、サービスに活かせないかという視点を持つと、自社ECサイトのデータは一気に活用方法が広がるのです」(田中氏)
データの活用は商品に対してだけではない。アダストリアがスタートしたリアル店舗「ドットエスティストア」でも、データの活用を進めている。

現在全国7店舗あるドットエスティストアでは、各地域の属性、客層、購買データなどから分析を行い、店舗内に並べるブランドや商品の中身を決めていく。陳列商品のセレクト自体に自社ECサイトのデータを活かすという取り組みを実験的に始めている状況を、田中氏は伝えた。
