(2)CDPとリテールメディアの台頭
つぎに、「(2)Customer Data Platform(CDP)とリテールメディアの台頭」について概要を話したい。
CDPの重要性はかなり前から叫ばれていたが、GoogleのChromeでのサードパーティーCookie廃止が2024年に開始されることで、利用可能な「Customer Data(顧客データ)」を持つ者と持たざる者の差が激しくなっていく。Digidayの記事に「顧客データを持たない者は、今後お先真っ暗だろう」:ポストCookieに関する、あるCPGマーケターの告白|DIGIDAY[日本版]とあるが、私も「お先真っ暗だろう」と考えている。
このDigidayの記事でいう「ポストCookie」とは、サードパーティーCookie廃止後の話だが、その代わりになるのは、「ファーストパーティデータとして収集した顧客データ」ということだ。先ほどの記事は、CPGマーケターの告白として書かれているが、顧客データを持たない媒体社も同じ状況に陥っていく。ここには既存のテレビ局も含まれる。テレビ局は早急にCDPを準備して電波返上に向けた準備を始めるべきだと私は思っている(もちろん、余計なお世話だとは思うが)。
では、大手プラットフォーマーの状況はどうなのか? 次のPCMagの記事「What Does Big Tech Know About You? Basically Everything | PCMag」をぜひ参照して欲しい。この記事では、それぞれ、Google、Facebook、Apple、Twitter、Amazon、Microsoftが、収集していることを認めているデータ項目を列記し、比較表示している。
さて、「広告業界の今後10年をどうみるか?」という問いに対して私は、広告効果に応じて広告媒体は「棲み分け」ていくことになると冒頭に書いた。「棲み分け」ていくことになると考えている主な理由の一つは、上記のPCMagの記事にあるように、各プラットフォーマーはそれぞれ、独自に収集したファーストパーティデータを顧客データとしてもっているからだ。
もう一つ、非常に重要な「リテールメディアの台頭」についても触れたい。これは、Amazonが広告プラットフォーマーとして急成長した事実を踏まえて、かつ、Microsoftも2019年にリテールメディア・ソリューションのPromote IQを買収し「前年比300%の成長を遂げており、ディックス・スポーティング・グッズ(DICK’S Sporting Goods)、ホーム・デポ(The Home Depot)、クローガー(Kroger)などの企業がデジタルマーケティングベンダーのプログラムに同プラットフォームを利用している」(参照:「マイクロソフトの担当GM、プライバシーと広告事業を語る:「いまがひとつの転換点」|DIGIDAY[日本版]」)とのニュースが出ていたので、面接では触れたほうがベターだと考えて、敢えて話したというのが本音だ。
だが、先のPCMagの記事で、Google、Facebook、Apple、Twitter、Amazon、Microsoftが保持しているデータ項目を眺めながら、なぜ、Amazonが急激に広告事業で成長したのか?についてぼんやりと考えていたときに、私は、広告業界の今後の10年は「棲み分け」ていくことになるな、と思ったのだ。つまり、リテールメディアは棲み分けることになる。
たとえば、Amazonが扱っていない商品を販売するECサイトなら競合しない。だから、「棲み分け」ながらAmazonと同じ広告ビジネスモデルを導入できる。「モノタロウ」のようなECは「棲み分け」の好例だろう。他にも様々なECがあるわけで、規模の収益性と利益率を加味すると、ある程度のユーザー数・アクセス数などが必要だろうが、それをクリアするECなら、リテールメディア化できるはずだ。
おそらく、お分かりだと思うが、Amazonが広告事業で急成長した理由は、顧客データを元々持っていたからだ。顧客データを保持し、ある程度のユーザー数・アクセス数があれば、それをもとにCDPを構築して、メディア化できる。つまり、広告媒体になれるということだ。これが、広告業界の今後10年のトレンドのひとつとして、リテールメディアも注目するべきだと考える理由である。
