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リゾームマーケティングの時代

広告業界次の10年、カギを握る3つの視点/広告効果に応じて「棲み分け」ていく世界が到来する

(3)AIの実用化と既存検索エンジンの凋落

 最後に「(3)AIの実用化と既存検索エンジンの凋落」について簡単に触れておきたい。Microsoftの面接でこの話をしたのは、Microsoftが以前からAI領域に力を入れていることを知っていたからだ(参照:「マイクロソフト、ChatGPTのオープンAIに投資 数十億ドル:日本経済新聞(nikkei.com)」)。 

 また、ChatGPTが有名になったのであまり説明は必要ないと思うし、Amazon Alexaなどが普及し始めた頃から言われていたことだが、AIに話しかけて回答が得られるのであれば当然、検索エンジンのニーズの一部は徐々に低下していくことになる。

 ついでにいえば、Googleではなくて、InstagramやTwitterで検索して情報を探す人が増えているという話もある。今回の趣旨からずれるので詳しく説明しないが、FacebookなどSNS内部の情報やアプリ内部の情報に始まり、今後はIoT家電などもそうだが、オープンなウェブをクロールして収集できない情報が増加するにつれて、検索エンジンでは対応できない情報が増えていく。その結果、いずれにしても、検索エンジンの重要度は下がっていくことになる。

有園氏による、今後10年の広告業界の見通し

 それでは最後に、ここまで書いたことをまとめておこう。まず、今後の10年でテレビ局が電波返上する可能性がある。そのため、テレビはネットメディアになる。すると、YouTubeやAbemaTV、Netflixなどと横並びになってしまうので、テレビ局もCDPを準備していくほうがいい

 つぎに、2024年のサードパーティーCookie廃止後、その代わりになるのは、「ファーストパーティデータとして収集した顧客データ」である。

 この顧客データをベースにして、広告効果に応じて各広告媒体は「棲み分け」ていく。もちろん、広告配信テクノロジーも重要で、リッチな顧客データがあったとしても、広告主が満足する効果を出せなければ、その媒体は広告事業的には廃れていく。ここには、テレビ局もリテールメディアも含まれる。

 ただし、広告効果はコンバージョン目的だけではなくブランディング目的もある。リテールメディアはコンバージョン目的に向いていて、動画広告配信はブランディング目的に向いている。その観点からも、それぞれ目的に応じて「棲み分け」ていくはずだ。

 また、今後の10年は、AIの実用化によって、既存検索エンジンの凋落が徐々に進行していく。そういう意味では、大手検索エンジン企業は、AIへの投資が非常に重要になるだろう。また、それぞれが持っている顧客データに応じて検索連動型広告も「棲み分け」ていくことになる。

 では、Google、Facebook、Apple、Twitter、Amazon、Microsoftなどを比較して、今後の10年、どこが最も成長すると私が思っているか? 当然、今私が属するMicrosoftが最も有利で最有力だと思っているが(笑)、もちろん、人によって意見は異なるだろう。

 私がどのような視点で今後10年を考えているか、参考までに、Microsoft入社以前のコンサルタント時代に使っていた分析軸について、紹介して終わりたい。

6つの分析軸

  • 「ファーストパーティデータ」か「サードパーティーデータ」か?
  • 本人確認・特定の質と量
  • RFM(Recency Frequency Monetary)の質と量
  • 閲覧・行動履歴データの質と量
  • 購買データの質と量
  • デモグラフィック・サイコグラフィック観点での顧客データの質と量

 たとえば、Gmailなどのアカウントの場合、公的証明書(免許証など)で本人を確認している訳ではない。そのため、厳密に個人を特定することはできないし(個人ではなくて一般的にブラウザやCookieなどでトラッキングしている)、一人で複数のGmailアカウントを作っている人もいるため(私も複数もっている)、個人をユニークに分析することは難しい。これは、Facebookなども同様で複数アカウントを保持する個人も存在し、かつ、SNSの場合、男性が女性に(女性が男性に)成り済ましているケースもあってユニークな特定は困難だ。それでもFacebook広告のコンバージョン効果が一般的に高いのは、閲覧・行動履歴データの質と量が高く、かつ、RecencyとFrequencyが充分に高いからだ。

 一方で、Amazonの場合、公的証明書で本人確認している訳ではないが、クレジットカード情報や配送先住所を登録しているため、かなり高い精度で個人を特定できるはずだ。また、購買データをAmazonは大量に保持しているため、その質と量は圧倒的で広告ターゲティング精度も高くなりやすい。などなど、それぞれ得意領域が異なっており、それぞれの特徴がある。

 各プラットフォーマーの特徴を詳細に説明することはしないが、2024年のサードパーティーCookie廃止後は、それぞれがどんな顧客データを保持しているかが重要になる。そして、どんなデータとサービス、テクノロジーをもっているのか、それを頭に入れて、広告業界を俯瞰するとき、私には、広告効果に応じて「棲み分け」ていくという景色がみえるのだ。それが、「広告業界の今後10年」の私の見解だ。

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この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

Regional Vice President, Microsoft Advertising Japan

早稲田大学政治経済学部卒。1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>)で出版される。2004年、日本初のマス連動施策を考案。オーバーチュア株式会...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/02/07 07:00 https://markezine.jp/article/detail/41185

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