誰よりも真剣にやるしか勝つ方法がなかった
有園:今回は、サイバーエージェントの岡本さんを訪ねています。岡本さんとは直接的な仕事の接点はありませんでしたが、ネット広告の黎明期から市場の拡大をリードされ、いろいろな場面でお会いしていました。今日はお話をうかがえるのが楽しみです。サイバーエージェントには、新卒で入社されているのですよね?
岡本:はい。当社の創業が1998年で、そのすぐあとの2000年に入社しました。
有園:現状のネット広告の形が大まかにできあがったのが、2002~2003年ごろだと思います。そのころ既に御社が検索連動型広告でトップだったので、まさに業界をリードされてきた方だと思っていました。当時、20代で子会社の社長を務めたりもされていましたが、どのような感じだったのでしょうか?
岡本:ただただ、必死でした。2003年にSEM分野の100%子会社、シーエーサーチの代表に就任したものの、業界には自分より一世代も上でキャリアも経験も厚い方々が多かったので、簡単に太刀打ちはできないと。誰よりも詳しくなり、誰よりも真剣にやるしか勝つ方法がなかったんです。
同社は2007年にサイバーエージェントと合併し、同年にインターネット広告事業本部の統括本部長、その翌年にサイバーエージェントの取締役に就任しました。子会社時代に限らず、常に「やるからにはいちばんいいサービスにしてシェアを獲ろう」と思っていました。若い会社だったので、マーケットへの刺激という点では、若いチームでやることに一定の意味があるとも捉えていましたね。そう言うとおこがましいですが、あくまで自分たちの気持ちとしては(笑)。
サイバーエージェントが急伸した背景にある組織文化
有園:いや、業界において御社の勢いとインパクトは相当でした。岡本さんのリーダーシップが卓越している、市場拡大をリードしているという話は、私も存じ上げていました。「やるからには」という考えは、藤田さんの号令の下だったのですか?
岡本:そう思われがちなのですが、むしろ現場からという感じです。うちはあまりトップダウンの会社ではなく、藤田から目標を提示したり、ああしろ、こうしろと細かく指示したりすることはないんです。もちろん、役員会で定期的に各事業の報告は聞いていますが、基本的には自分たちで決めてやってくれというスタンス。私自身も、過去に藤田と1on1でミーティングしたのは本当に初期の一度だけですね。
有園:そうなんですね、それは意外です。ご自身では、どのようにチームを率いてこられたとお考えですか?
岡本:いちばん心がけていたのは、“志”の共有だったと思います。インターネットのポテンシャルを最大限に発揮してクライアント企業にマーケティングに取り組んでいただきたい、それをどの競合よりも実現できる会社を目指そうという“志”です。
そもそもネット広告という市場が立ち上がってからの10年ほどは、これまでの広告の常識が変わっていく、非常におもしろい時期でした。そのタイミングでは大きくチャレンジできる環境にある。いい人材や、協力してくれる研究者の方々も集まる。こんなチャンスはないとチームで常に意識していました。
有園:おもしろみの反面、大変だったことは?
岡本:スピード感についていくことです。今はもはや普通になりましたが、たとえばGoogleのアップデートの仕方なども半端じゃなかったですね。