アルファ世代を取り巻く影響要因
普段から複数デバイスが利用できる環境にいるアルファ世代の行動意図や行動の背景を探るため、保護者とのお買い物調査や2030年の未来を思い描いていただくワークショップなどを通して、アルファ世代本人と保護者のインタビューを実施した。
その中で特徴的なエピソードとして挙がったのが、保護者が使い方を説明しなくとも未就学時から自然にタッチやスワイプの動きを理解し、スマートフォンやタブレットを利用できていたという話だ。小学生になったアルファ世代は、インターネット通販サイトの「検索」や「お気に入り」を使いこなすという。たとえば、欲しいものをお気に入りに登録して保護者に伝えたり、レコメンド一覧から欲しい商品の商品名がわからなくても、類似商品から出現する可能性を理解し、欲しい商品にたどり着いたりする行動も見られた。
このようにスマートフォンやタブレットを扱えるからこそ動画の視聴も難なく行うことができ、中には配信者のフォロワーや視聴回数の多さで情報の正確性を語る人もいて、情報リテラシーが高いことも知ることができた。
一方で保護者は、スマートフォンやタブレットの利用そのものを制限することは難しいと感じ、利用を前提とした付き合い方の検討に苦労している。たとえば、利用時間を制限し、見守りタイマーをつけるなどの工夫をしている家庭が多く見られた。
制限をする理由としては、視力の低下など身体的な心配に加え、子どもの行動を把握できずトラブルに巻き込まれるリスクの回避や、他の時間(勉強や習い事など)への悪影響が挙げられた。実際には、保護者が不在の場合はタイマーを消して利用し続け、保護者と喧嘩になる話もあり、アルファ世代と保護者の間で意見の相違があるかもしれない。
また、今回調査した世代(アルファ世代、Z世代、ミレニアル世代)の中でアルファ世代のゲーム機の使用率が最も高かったことから、インターネットに接続された状態のゲーム利用についても話題となった。最近耳にする機会が多い「メタバース」を理解しているアルファ世代はいなかったが、話を聞くと学校から帰った後に友達とオンラインゲームのロビーで待ち合わせをするというアルファ世代も数名存在した。
また、オンライン上でリアルでは知らない人とマッチングして、ゲームすることへの違和感はなく、アルファ世代にとっては「普通」のことのようだ。ただ、ボイスチャットなどリアルにつながることには抵抗があり、この部分は保護者と同意見であった。
最後に
私たちは、未来を牽引する生活者の1つの切り口として、現在の日本のアルファ世代を調査対象として研究を進めている。アルファ世代の研究調査は、世界的にもまだ始まったばかりな上、成長期真っ只中な年齢層であることから、行動特性や意識も変化していくことが予想される。ワンショットの研究調査に留まらず、継続的に研究を進め、さらなるアルファ世代の理解に貢献したい。
【調査概要】
(1)定量調査
期間:2022年4月29日から2022年5月9日
調査地域:日本全国
対象者:10歳から40歳までの989人(内訳:アルファ世代321人、Z世代329人、ミレニアル世代339人)
調査方法:インテージのネットリサーチによる自主調査
10歳~15歳は、承諾した保護者の聞き取りによる代理回答を加えた
(2)定性調査
期間:2021年12月~1月、2022年4月~5月の2回実施
対象者:52人(内訳:ミレニアル世代7人、Z世代31人、α世代14人)
調査方法:計画購買を促すため、各世代の1ヵ月の平均小遣い金額よりも少し高めの指定金額を調査費用として提供し、指定した期間で買い物をしてもらい、後日インタビュー調査
補足:対象者は、当社の従業員のご家族とその紹介、共同研究先の学生に協力いただいた