SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

グローバルの風向き、トレンドを知る。海外カンファレンスレポート

困難を突破するには、効率の追求だけでなく「人に寄り添うリテール・エクスペリエンス」が重要

従業員に寄り添った企業文化・テクノロジー

 冒頭で述べたように、今回のNRF2023のセッションは全体的に企業として、人や地球に対してどう考えるべきかを語るセッションが多かった。その背景は2つある。1つ目は深刻な人手不足の背景の中で、企業自身が従業員エンゲージメントを高め人材を確保する必要がある点、2つ目は経済格差、社会の分断などの様々な課題を社会全体で解決することが求められる中で、テクノロジーや企業としての姿勢を明確にすることがこれまで以上に重要視されている点だ。

 従業員に焦点を当てた内容では、米国小売大手ターゲット CEOのブライアン・コーネル氏と同社の4人の女性リーダーとのセッションが印象的であった。

左からターゲット CEOブライアン・コーネル氏、ダイバーシティ&インクルージョン最高責任者 キエラ・フェルナンデス氏、副社長兼最高成長戦略責任者 クリスティーナ・へニントン氏、バージニア州/ノースカロライナ州店舗副責任者 アレクシス・シェパート氏、副社長兼チーフゲストエクスペリエンスオフィサー カーラ・シルベスター氏(提供元:NRF)
左からターゲット CEOブライアン・コーネル氏、ダイバーシティ&インクルージョン最高責任者 キエラ・フェルナンデス氏、副社長兼最高成長戦略責任者 クリスティーナ・へニントン氏、バージニア州/ノースカロライナ州店舗副責任者 アレクシス・シェパート氏、副社長兼チーフゲストエクスペリエンスオフィサー カーラ・シルベスター氏(提供元:NRF)

 ターゲットでは従業員の半数近くが女性社員であり、リーダークラスの女性比率も半数近くだという。ダイバーシティ&インクルージョン最高責任者のキエラ・フェルナンデス氏はセッションの中で「企業文化が働き方、カスタマーエクスペリエンス、製品の定義すべての道徳的な基準になっている」と話す。

 多様性を製品に反映する一例として商品をデザインする際には、多様な肌の色や好みを想定した、独自に開発しているという。

 「私たちは喜びと目的のために立ち上がり、つながりや包容力、推進力のために立ち上がるのだと知っています。この国を反映するようなコミュニティで、それを実現しなければなりません。誰かが、私たちの店のあらゆる部分に、自分が反映されていることを見いだせるようにするための行動なのです」と強い思いを語った。

展示に見る、従業員の体験を向上するテクノロジー

 展示会場でも全体の印象として、カスタマーのエクスペリエンスを向上させるテクノロジーよりも、やはり業界が置かれている人手不足を背景とした、従業員の業務効率化や体験を向上させるテクノロジーが多く展示されていた。いくつかご紹介する。

 DATALOGIC社のAIレジ端末は商品をスキャンすると瞬時にAIが画像を解析する。商品タグやバーコードを必要しないレジ端末であった。

 DATALOGIC社のAIレジ端末 置くだけで「りんご」であると認識する(著者撮影)
DATALOGIC社のAIレジ端末 置くだけで「りんご」であると認識する(著者撮影)

 Sephora社の広告機能などカスタマイズ性の優れた電子棚札が印象的だった。特に下の画像のように、商品の位置に合わせて価格ラベルや二次元バーコードを直感的にスライドできる機能は現場の従業員に寄り添っている。

Sephora社の電子棚札 棚のモニターは下部をスライドすると位置を変えられる(著者撮影)
Sephora社の電子棚札 棚のモニターは下部をスライドすると位置を変えられる(著者撮影)

 RFIDを扱う企業は多く目立った。独MetraLabs社の在庫チェックロボット・TORYは店内を巡回してRFIDタグが付いた商品を自動で読み取ることで、従業員による店内の在庫チェックの手間が大幅に削減することができる。

MetraLabs社のTORY(著者撮影)
MetraLabs社のTORY(著者撮影)

 世界が直面するこれからの時代に、お得で便利で簡単な体験提供だけでは”Breakthrough”するのは難しい。カスタマーや従業員を中心に置き、全方位的に幸せな状態を作ることを前提に、テクノロジーによる利便性を向上させつつ、人に寄り添ったエクスペリエンスを提供することが”Breakthrough”のヒントではなかろうか。

 第2回は「サステナビリティ」への投資、実際のNY旗艦店の取り組みをお伝えする。

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
関連リンク
グローバルの風向き、トレンドを知る。海外カンファレンスレポート連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

西 湧太(ニシ ユウタ)

 電通デジタル CXトランスフォーメーション部門 CXUXデザイン事業部 リテールエクスペリエンスグループ兼グローバルビジネス部門CXグループ

 電通デジタル入社後、小売・金融・製薬・通信などの幅広い業界の国内クライアントおよびグローバルクライアントにてUXデザインに必要な、リサーチ(定量/インタビュー...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2023/02/27 11:48 https://markezine.jp/article/detail/41234

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング