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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

イベントレポート

ブランドは「n=1」とどう向き合い、価値につなげるか? キリンとスマイルズの実践から紐解く

スクリーニングをかけずに選んだ熱量の高いテナント

野崎:発意が大切なのはコンサルティング事業でも同じです。僕たちがプロデュースした東京ミッドタウン八重洲のパブリックスペース「ヤエスパブリック」の事例をご紹介します。

野崎:コロナ禍以前の都心部で商業施設の建設ラッシュが起きた結果、「新業態」や「初上陸」などの触れ込みが、いち生活者としての自分にはあまり響かなくなってしまって。一方でテナントの立場になると、出店に際して毎度のように新業態や新しい取り組みを求められるケースが多いのです。「ブランドの在り方はビジネスの重要なトピックなのに、なぜ外的な要請によって自社が多大なリスクを負い、チャレンジし続けなければならないのだろうか」と疑問を感じていました。

高山:真っ当な疑問ですね。

野崎:生活者と出店者、2つの視点でヤエスパブリックのコンセプトを考えた結果、「出店のハードルをとことん下げる」「テナントの選定は担当者の個人性を重視し、裁量を与える」という方針になりました。具体的には、キッチンなどの設備をデベロッパー側で企画・設置し、直ちに営業が始められる状態をつくったのです。

 商業施設のテナントを決める際「施設のコンセプトに合わない」「商業施設に出店した前例がない」という理由で選択肢が狭まってしまうことがしばしばあります。今回はあえてそのようなスクリーニングをかけず、担当者の生活者視点を活かし、純度高く「良い」と思うテナントに入っていただいたのです。その結果、個人店・路面店を中心としたユニークなラインアップが実現しました。オーナーの方々の熱量が高く、商店会のような雰囲気の中で和気あいあいと準備しています。

出し手/受け手のコンテクストを徹底的に考える

野崎:商業施設では、デベロッパー主導で「季節の●●フェア」などを催すケースが多いですが、ヤエスパブリックではそのような企画を現時点では検討していません。どちらかというと、テナント同士で盛り上がってフェアを企画するケースが生まれることを期待しているからです。

ヤエスパブリックのモットー
ヤエスパブリックのモットー

平山:良いカオス感ですね。きっとお客様側も熱量を持って来てくださると思います。消費者というより参加者の気持ちに近いかもしれません。

野崎:まさにその状態を目指したいです。外側のシステム自体に新しさはなくても、異常な熱量を発する場所をつくる──新しいデベロッピングの形がヤエスパブリックから生まれると良いなと思っています。

高山:野崎さんがn=1と向き合う際に、大切にしていることがあれば教えてください。

野崎:コンテクストを非常に重視しています。「僕たちはなぜこのお店でスープを注いで提供するのか」という出し手のコンテクストと、「なぜこのお客様は今日お店に来てこのスープを頼んだのか」という受け手のコンテクストです。これらを徹底的に考える姿勢が、我々クリエイティブの仕事の前提にあります。

 出し手のコンテクストとは結局「やる必然性」だと捉えています。「今その市場が高まっているから」などの外部要因ではなく、n=1のときめきや妄想のようなものです。受け手がそれらに共感してくださればn=2になり、やがてn=3にも4にもなっていくはずです。

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この記事の著者

渡辺 佳奈(編集部)(ワタナベ カナ)

1991年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部を2013年に卒業後、翔泳社に新卒として入社。約5年間、Webメディアの広告営業に従事したのち退職。故郷である神戸に戻り、コーヒーショップで働く傍らライターとして活動。2021年に翔泳社へ再入社し、MarkeZine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/03/01 07:00 https://markezine.jp/article/detail/41336

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