世界観やインサイトに合わせた音声制作がカギ
MZ:AI合成音声は今後、多くの企業でも効果が期待できそうです。活用においてどのようなノウハウが求められるのでしょうか?
久保:D2C Rのクリエイターは、抑揚やイントネーション、行間など、細かい表現にもこだわって音声を制作しています。
久保:ノウハウのないままにAI合成音声を使用するとやはり、機械的な印象を与えてしまいがちです。イントネーションに違和感のある声や、無機質な声では、興味を持ってもらえません。
今回のLIPSさんの動画広告でも、冒頭にフックになるようなセリフを置いており、その音声を抑揚などの表現を工夫することで、耳に留まる声にしています。
AI合成音声を使えば何でも当たるということではありません。ただクリエイティブを量産するのではなく、ターゲットのインサイトや商材のUSP、プラットフォームごとの特徴をしっかりと理解して、一つひとつのクリエイティブを確度高くプランニングしています。クライアントの持つ世界観やターゲットのインサイトに合わせ、受け入れられやすい“声”を作っていくことで、より効果的なクリエイティブになるようにしています。
動画広告に留まらないAI合成音声の可能性
MZ:AI合成音声の動画広告への活用について、今後の展望を教えてください。D2C Rとしては、今後どのような価値を提供できるとお考えでしょうか
一ノ瀬:TikTok以外のプラットフォームにも転用させていければと、今まさに、InstagramやYouTubeでの配信を進めています。TikTokだけでAI合成音声を配信しても、おそらく限界がきてしまうでしょうし、トレンドの移り変わりの激しいプラットフォームだからこそ、ユーザーが飽きてしまう可能性も十二分にあります。
ユーザーが複数のプラットフォームに介在しているからこそ、認知と獲得を横断的に行い、AI合成音声を使った動画広告のパワーを武器に、ユーザーの接触回数を増やしていければ、と考えています。
久保:YouTubeやSpotifyなど、音声をオンにした状態がデフォルトのプラットフォームはTikTok以外にも多く存在するため、AI合成音声の展開は広く考えられますね。目線は画面以外に気を取られていたとしても、耳から“ながら”でアプローチできるのが大きな強みです。また、AI合成音声は比較的安価で手軽なため、検証のためにいくつかの訴求軸を展開していくことも可能です。そして、一番効果の高い訴求軸ではリソースをかけて、マス広告に転用させるなど、ステップを踏むこともできます。そういった面では、音声広告や動画広告に踏み出せずにいる方も、挑戦しやすいのではないでしょうか。
廣瀬:今後、SNSや動画プラットフォームなどによってAI合成音声がさらに普及することで、より生活者がこうした音声を受け入れやすい世の中になっていくでしょう。それに合わせて、UGC風の動画に限らず、イラストと組み合わせて作る簡単なアニメーションなど、クリエイティブの表現の可能性は、今後より大きくなっていくと思います。
私たちの強みであるAI合成音声制作の技術と、データに基づいた広告プランニングを生かし、プラットフォーム・ターゲットと幅広い表現を掛け合わせて、広告効果の最大化を図れるクリエイティブを作っていきたいと考えています。