成長するリセール市場、差別化の鍵はカスタマーエンゲージメント

近年の消費動向として、長く使える一点ものを購入する、ものを捨てるのではなく売るといったサステナビリティを意識した傾向が高まっている。リセール(中古品)市場が大きく成長している背景の1つでもある。米老舗高級百貨店の姉妹店で、ラグジュアリーブランドなどのアウトレット品を販売するサックス・オフ・フィフスのページ・トーマス氏はリセール市場における競合との差別化ポイントを強調した。
中古品は在庫の確保が最も重要かつ難しい市場と言われている。カテゴリーやサイズ違いなど、特にブランド品においては需要のある在庫を確保する必要がある。そのためサックス・オフ・フィフスでは社内に市場動向を常時モニタリングする専門機能があるという。
生活者のWeb検索行動やソーシャルメディアなどの発信から需要を予測し、毎月の予算を決定し、即座に中古品の買付に投資する。また、カテゴリーバラエティのある品揃えを確保するためには信頼できるパートナーシップも重要だ。同社は昨年、レント・ザ・ランウェイ社と提携し、数十名の有名デザイナーによる中古ファッションアイテムも購入できるようになった。

レント・ザ・ランウェイCEOのジェニファー・ハイマン氏は「レンタルであれ、リセールであれ、それらは私たちの業界にとってより持続可能な未来を創造するための重要な一部です。より多くの消費者をインスパイアし、衣服の寿命を延ばす素晴らしい出発点になります」と持続可能な未来へ向けた期待感を述べる。
トーマス氏は最後にカスタマー視点での競合との差別化に言及。信頼できるパートナーシップによる豊富な製品の取り揃えの他、製品と価格競争だけでは持続的なビジネスは難しいため、カスタマーエンゲージメントの重要さを強調する。その一例として、会員リワードプログラムでは1年で150万人の会員を獲得した。今後はカスタマーが長くサービスを使えば使うほどリターンのあるサービスを目指すという。
ホールフーズに見る、CXとして成立するサステナビリティ
「私たちがやろうとしている取り組みの肝は、米国の消費者と農業を再び結びつけ、土地に環境スチュワードシップを置く重要性を伝えることだと思っています」ホールフーズCEOジェイソン・ビューチェル氏は語る。
米大手高級スーパー ホールフーズの先進的なサステナビリティの取り組みは有名だ。NRF2023で同氏は生産地域やサプライヤーとの長期的なパートナーシップによる取り組みと、それらをどのように生活者に体験してもらうか考えを示した。
これまで4,000万ドルの資金を投入してきたという同社の「ソースト・フォーグッド(Sourced for Good)」プロジェクトは第三者認証機関による認証プログラムだ。生産過程における労働者の賃金の保護、フェアトレードによる生産であることの認証、サプライヤーへの教育プログラムなどがなされているかなど、高い調達基準を満たしたプロダクトであることを証明するものである。

筆者も店舗に足を運んだが、店内には”LOCAL”の大きなラベルのコーナーがあり、各生産地域と生産者の顔が見えるようになっている。商品も種類豊富に並んでおり、思わず手に取りたくなるようなパッケージのデザインであった。
第1回でも同社の店舗体験については触れたが、買い物自体の情緒的な体験と、テクノロジーを活用した利便性の高い体験が融合している。こうした豊かな店舗体験の上で、プロダクト自体の信頼性や生産やプロセスの透明性による安心と、認証プロダクトの購入によって生活者自身もサステナビリティに参加できるようになっている。カスタマーエクスペリエンスの中でしっかりとサステナビリティが成り立っていると言える。