体験設計の肝は「顧客と同じ目線に立つ」こと
味澤氏に続いて、SHIBUYA109エンタテイメント代表の石川氏が、同社の事業戦略から見る業務提携およびCreator Collaboration Space開設の意義を語った。

SHIBUYA109エンタテイメントは、全国にある四つの商業施設を運営。そのうちの一つである「SHIBUYA109渋谷店」に関して、石川氏は「“半歩先を行くトレンド”の発信地である渋谷で、単なるモノ消費のための場所ではなく、施設全体で高い体験価値が得られる場所を目指している」と語る。
今や多くの若者がデジタル接点をきっかけに消費する時代だ。「まずはSNSで商品を目にし、共感のアンテナが立って初めて来館いただける。施設はいわば体験の“中間地点”」と石川氏。そのため、SHIBUYA109渋谷店の体験設計においても、デジタルなコミュニケーションを起点とした施策の体験設計を行っているという。
若者を対象とした体験設計において、肝となるのが「顧客が今求めているものは何なのかを、顧客と同じ視点に立って考えること」だと石川氏は語る。SHIBUYA109エンタテイメントは2018年に若者マーケティング研究機関のSHIBUYA109 lab.を創設した。そこで得たデータは、自社だけでなく他社のマーケティングや事業支援にも活かしているそうだ。
そして今回、Creator Collaboration Spaceのビジネス向けマーケティングプランにおいて、SHIBUYA109エンタテイメントとSHIBUYA109 lab.は「独自のネットワークを使ったリサーチやデータ分析を行うエキスパート」という位置づけで参加する。石川氏は「Metaとの業務提携により、若者へのマーケティングアプローチやプロモーションに悩みを抱える企業の課題解決により一層貢献していきたい」と意気込む。
マーケットインのアプローチでは共感は得られない時代に
次にSHIBUYA109 lab.で所長を務める長田氏が登壇。SHIBUYA109 lab.が日頃行っている若者の実態調査の結果や、Creator Collaboration Spaceビジネス向けプランにおける具体的な取り組みを紹介する。

SHIBUYA109 lab.では、SHIBUYA109がターゲットとする「around20(15~24歳)」の来館者らを対象に、長田氏自身が毎月約200人単位でヒアリングを実施。彼らと日々交流する中で、若年層の価値観の多様化を実感しているそうだ。
「最近では、around20同士でさえも互いに興味のあるテーマがわからないほど価値観の細分化は進んでいます。企業・ブランドも従来のマーケティングアプローチを変える必要があるでしょう」(長田氏)
これまで企業・ブランドは、マーケットに対し一方的に商品・サービスを提供していたというが「それでは今の消費者からは共感を得づらい」と長田氏。今は若者の“生の声”により真摯に耳を傾ける必要があると指摘する。
一方で、長田氏が企業を支援する中でクライアントから聞こえてくるのが「若者との接点を持ちにくい」という声だ。「いざ若者の声に直接耳を傾けようと思っても『若者と交流できる場がない』というご相談をよくいただく」と長田氏は話す。