自分のやりたい仕事にチャレンジし続けるには
――マーケティング業界は女性が活躍しやすいといわれますが、実際はそれぞれ課題を抱えて働く人が多いと思います。女性のキャリア形成にはどのような課題があると感じますか。
香川:「ロールモデルがいない」という声はよく聞きます。それは私自身も感じてきたことですし、だからこそ、応援してくれる上司の存在が大きかったです。また、日本は女性と男性の家事参加の割合に大きく差があり、それも課題です。家庭内の状況によって、自分のやりたい仕事にチャレンジできないとか、そういった問題がありますね。

鈴木:これらを子育て中の女性のみのキャリアの課題と見るのか、男性も同じ悩みを抱えていると見るのか、難しいところがあります。今のチームメンバーには、子育て中の女性もいれば、奥さんと一緒に幼い子どもを育てている男性もいますから。ただ、そういった人たちを見ていると、当事者は少しずつ意識が変わってきていると感じます。重要なのは、企業側がそれにどう向き合うのか。当事者たちの変化に遅れを取らないことです。
私自身は子どもがいないし、結婚もしていません。自分が経験していないことはわからないので、メンバーにどんな声をかけるべきか、考えても出てこないこともあります。そんな時は、「今はどんな感じ? どうしたら働きやすくなる?」と聞くようにしています。そうすると、「できればこうしたい」と言ってくれるので、部内で調整したり、人事に伝えたりできます。
「管理職になりたくない」部下に何を話すか
――帝国データバンクの2022年の調査によると、企業における女性管理職の割合は平均9.4%と、依然として1割未満です。一方、若者が管理職になりたがらないという話も聞きます。マネジメントの立場として、キャリア支援で意識していることはありますか。

香川:メンバーとは定期的に「何を目指して働くのか」という話をするようにしています。3年先、5年先にどうなりたいのか。質問を投げかけながらそれを引き出し、実現できるようにサポートしていくのが私の仕事です。
花王さんもIndex Exchangeも、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)に積極的に取り組んでいます。女性はもちろん、多様な人材の活躍を推進しているので、「仕事の責任が重く大変」「仕事と家庭の両立が難しい」と、あまり先入観を持たずにキャリアプランを考えてみて欲しいですね。
鈴木:管理職というと日本ではあまり良いイメージがないですよね。しかし、本来マネジメントとは何なのか。メンバーを管理するという、ともすれば嫌われ役といった側面だけでなく、たとえば、働きやすい環境づくりやメンバーのパフォーマンス向上、成長のきっかけづくりなど、喜びを感じられる楽しいこともたくさんあります。
だから私は「責任は重くなるが、権限を持てばできることが広がる」と伝えています。「権限」も嫌な言葉に聞こえますが、権限を持つとは、自分がメンバーや会社のために正しいと思うことを自分で決裁してみんなと進められるということです。そのように噛み砕いて伝えれば、単なる嫌な役回りではないとわかってもらえます。また、「私にできるかわからない」という控えめな人には、「あなたはこんな良いところがあるから、それをこう生かせる」と伝えると腑に落ちることもあります。特に女性は自信がない人が多いかもしれないですね。