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イベントレポート

読売ジャイアンツのファン分析でわかった、LTVを上げるトリガーとは?施策反映のポイントとともに解説

特定選手ファンを「箱推し」にするための施策とは?

垣内:続いて「特定選手ファン」についてです。これは、一人の選手をひたすら応援しているファンを指します。実はこの層が一番お金を使うんですよね。

 N1インタビューを通して「A選手のユニフォームを見せてくれたあの人」「B選手の写真を壁紙にしていたあの人」という具体的なイメージをつかめたからこそ、そのファンに向けた施策を打っていきました。

 また特定選手ファンの課題は、選手が他球団に移籍してしまう可能性もあるため、放っておくと去ってしまうことです。そこでとった対策は、特定選手ファンから球団丸ごと好きな「箱推し」にさせること。施策としては、仲の良い選手同士のつながりを露出させていきました。

鳥羽:我々のYouTube施策では、特定の選手に偏らない紹介や、主力選手だけでなく新人選手あるいは外国人選手と人気選手の絡みを、勝利後などファンが喜ぶタイミング・内容で行うといった投稿を意図的に発信しています。人気選手からファンの幅を広げていくためです。

垣内:続いては「熱狂的ファン」です。試合もすべてチェックしていて球場にも何回も足を運びグッズもたくさん買う、最も重要な顧客層になります。

 熱狂的ファンは、公式サイトで試合日程を確認することを日々のルーティンにしています。定量アンケートのデータからも、「公式サイト閲覧頻度」と「利用金額」および顧客ロイヤルティの指標である「NPS」は相関関係にあることがわかりました。

 公式サイトを毎日見るファンは月1回以上見ているファンと比べ、球団へかける金額は1人あたり約1万円/月高いというデータが出ています。公式サイトを日常的に訪問してもらう重要性が改めて認識できました。

鳥羽:これまでのサイト運営では「何のために作ったのか」という目的が設定されていないまま、コンテンツが量産され続けるという負のループに陥っていました。しかしデータを比べることで、Webページやコンテンツの客観的な評価が可能になりました。

良質なコンテンツが熱狂的ファンに届かなかった理由

鳥羽:2020年に坂本選手が当時31歳の若さで2,000本安打を達成した際、その記念特集としてサイト上で「入団ヒストリー動画」などのコンテンツを充実させました。しかし、N1インタビューで熱狂的ファンがその存在を知らなかったことが判明。分析していくと、熱狂的ファンにコンテンツの存在を伝える導線がなかったことが原因でした。

垣内:実際、コンテンツは公式サイトのトップにあるニュースリリースのみでお知らせしていましたよね。

 一方で、N1インタビューから熱狂的ファンの公式サイトのユニークな使い方が見えてきました。彼らはまずマイページにログインしてからサイト内を回遊します。もし記念特集などのコンテンツをマイページに置いていたら彼らに見てもらえていたと思います。

熱狂的ファンは右上のマイページからログイン後、回遊する(読売ジャイアンツ公式サイトより)
熱狂的ファンは右上のマイページからログイン後、回遊する(読売ジャイアンツ公式サイトより)

垣内:また熱狂的ファンの熱が低下する理由として、「友達がいなくなる」点があることも判明しました。一緒に観戦に行ったり語ったりする友達・コミュニティがなくなると徐々に球場離れが進み、家で応援はするもののお金を使わない「熟成ファン」や完全に離れてしまう「離脱ファン」になってしまう。

鳥羽:ただ、これらのファンは実際に観戦経験があるため、きっかけがあれば復帰しやすい層です。特に熟成ファンは、熱狂的ファンに戻る確率が高いといえます。

垣内:アンケートでも「無料券があったら行きますか」という質問に、熟成ファン・離脱ファンはほぼ「行きます」と答えていました。きっかけを作りもう一度球場に足を運ばせることができれば、復活する可能性が高いです。最近だとコロナ禍で球場から足が遠のき熟成ファンになってしまった人を、どのように復活させるかは重要な論点になりますね。

鳥羽:また招待券の配布や割引施策などきっかけ作りの認知も、届けたい対象に合わせて適切なチャネルに投下しなければ届きません。熟成ファンや離脱ファンは球団のサイトも見ないため、テレビCMやネット広告を打つといった工夫が必要だと感じます。

垣内:このように顧客(ファン)の解像度を上げていき、何がファンレベル向上のトリガーになるのか明らかにしました。そうすることでWebサイトやメルマガ、CRMなど様々な施策における修正・改善の方向性が定められるのです。

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ポイントは「見たい情報」を「見たい場所」に置くこと

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この記事の著者

堤 美佳子(ツツミ ミカコ)

ライター・編集者・記者。1993年愛媛県生まれ。横浜国立大学卒業後、新聞社、出版社を経てフリーランスとして独立。現在はビジネス誌を中心にインタビュー記事などを担当。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/05/25 08:00 https://markezine.jp/article/detail/42185

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