規制の枠を取り払う意識を持つ
──求められるスキルや役割に違いはありますか。
森:大手企業だと、既に業界内でのシェアが大きいことが多いです。その分、マーケットの動きをより受けやすい側面があります。たとえば、旅行に関するサービスを扱う「じゃらんnet」では、パンデミックの影響で、売上や収益に大きな影響が出ました。
加えて社会から寄せられる期待も大きくなるので、法令遵守意識を高く持ち、コンプライアンスへの意識を払う必要があります。この2つの前提を考慮しながら事業を伸ばしていくことは、前職以上に求められています。
山口:主要なマーケティング施策は過去すでに実施済みであることが多いですね。なので「進化」が求められます。単純な手数の多さよりも確度を検証し、リスクを避けながら、チームでスクラムを組んで施策を進めていく能力が重視されます。実行後には、社内のさまざまな部署やレイヤーの社員が集まって、細かい部分まで都度「振り返り」をします。
これによってPDCAをしっかりと回せ、より効果的な次の打ち手につなげられている実感がありますね。
森:1人ではなにもできないな、と感じることが増えましたね。それだけ、社内のいろいろな人に支えられていると実感しています。
山口:対してベンチャー企業の方が人数も少なく、組織も整っていないことが多いので、自学スキルが求められます。予算や人に制約が多いため、その選択肢の中で最善策を素早く実施する能力が求められます。
森:ベンチャー企業は、組織が細分化されていないので、様々な施策を、ひとりで同時並行で推進できることが求められます。未実施の施策も多いので、手数多く施策を打つことが重要です。その際、領域外のことも含め自らパッと手を動かせることが、スピード感を担保するためには大事です。このあたりは、大手企業のマーケターと差別化できると思っています。

将来のキャリアを見据えて逆算を
──大手企業とベンチャー企業、どちらでマーケターをするか迷っている人がいたら、どのようにアドバイスしますか。
森:自分の今後のキャリアや積みたい経験を明確にして、それが得られる環境に行くべきです。自ら手を動かすスキルや、早くマネジメント経験することを求めるならベンチャー企業、社内合意を取って予算感の大きい仕事をしたいなら大手企業が良いと思います。
個々人の志向によってどちらが適するかは変わるので、まずは自分と向き合ってほしいですね。
山口:自分の将来に関する解像度が高いのであれば、規模にとらわれず自分に合うと思う企業に入社してみるのが良いと思います。反対に解像度が低いのであれば、多くの人の最大公約数的に大手企業はおすすめです。
森さんが言うように、規模や予算の大きな仕事は大手企業だからこそできますし、世の中に一定のインパクトを残す仕事をする経験は、様々な面で自身の糧にもなるのではと思いますね。
