サービスの提供を通じて顧客のニーズを発見
大里:chocoZAPは年齢・性別問わず、多様なお客様に受け入れられている印象を受けています。ここまで幅広い顧客ニーズを捉えられたのはなぜでしょうか。
村橋:膨大な数のテストを行ってきたことが大きな要因だと考えています。最初のchocoZAP型店舗は2021年10月にテストオープンしており、店舗の仕様はそれから現在に至るまでユーザーの声を基に変更を数多く繰り返しています。
たとえば、一台に複数機能がつくマルチマシーンの設置を取り止めたことは、ユーザーの声を反映した好例としてあがります。当初はトレーニング効率がよくなるのでニーズが多いと思っていました。ですが、実際にはジム初心者の方々が操作方法に迷ってしまうことで使いこなせない様子が見られました。
大里:テスト店舗の運営を通して、当初の仮説と実際のニーズで異なる部分を確認していったんですね。
村橋:そうです。サービス開始当初、RIZAPで培ってきたノウハウがあったことから、我々も仮説を明確に持っていました。ですが、調査を繰り返す中でchocoZAPユーザーが持つ実際のニーズとの間に大きなギャップがあると気づきました。
たとえば、現在訴求している「靴の履き替え不要」や「普段着のままOK」は、当初は強みだと認識できていませんでした。しかし、実際の調査により、chocoZAPを選ぶ理由の一つになっていることがわかりました。

村橋:このように、初めから固定観念を覆すような事業モデルを構想できていたわけではありません。サービスの提供を通して、意外な顧客ニーズに気づくことが多くありました。
それに合わせて店舗体験とマーケティング施策を調整していった結果、「自分のニーズに合う、新たなサービスが誕生した」と、多くの人に思っていただく結果につながったと考えています。
新規出店のたびにテスト検証、リアル店舗でPMFを体現
大里:これまでのお話を踏まえると、chocoZAPは特にSaaS業界で主流となっている「PMF(Product Market Fit)」の考え方を、リアルの店舗サービス設計で行っているように感じました。

村橋:我々もまさにその感覚に近いと思っています。先述のとおり、当社ではこれまで、店舗を出す度にテストを行ってきました。データや店舗からの声を基に、お客様の行動の観察・ニーズの把握・膨大な数のデータ検証を行うことで、店舗体験の改善・マーケティング施策の変更を繰り返し、今のコンセプトに至っています。
この考え方は、チラシ一つをとっても変わりません。コピーの位置・カラーリングなどの細かな箇所も上記の流れで変更し、最も反応率が高い現在のバージョンに至るまでに500パターン以上を試しました。
また当社の代表である瀬戸は、「テストだから色々試していい、失敗してもいい。それを学びとして次に活かせるから」とよく言っています。だからこそ、「店舗を出すこと自体がテスト」の姿勢で事業に取り組むことができました。これも上手くいった要因として大きいと考えています。
大里:世間一般的にみると「chocoZAPは突如現れた革新的なサービス」という印象があると思います。しかし、世の中に認知されるまでに、膨大な数のテストを繰り返して来られたことがわかりました。逆に言うと、すべてデータに裏打ちされた施策なので、再現性が非常に高いのではないでしょうか。
村橋:ひらめきの基で進めているというよりは、徹底的に検証されたデータやお客様の声を基に拡大している事業です。初期の出店時は集客が難しく、厳しいと感じる局面も数多くありました。しかし今では、もし同じように新規事業に取り組もうとした際にも活かせる知見が蓄積できているため、再現性は高いと考えています。