RIZAPが始めたコンビニジム 日本のフィットネス人口の増加目指す
大里:本連載では、店舗ビジネスの有識者や新たな店舗ビジネスで注目される企業の方々をお招きし、これからの店舗ビジネスの在り方について紐解いています。
RIZAPは、2022年7月より、新業態の“コンビニジム”として「chocoZAP」をローンチしました。事業の概要や同事業を開始した背景について教えていただけますか。
村橋:2012年にパーソナルトレーニングジム「RIZAP(ライザップ)」を主力事業としてスタートした当社ですが、新たな事業としてchocoZAPを開始した背景には、日本のフィットネス人口の低さがあります。現状では比率はわずか3.3%。非常に低い数値だと感じています。
当社が掲げるミッションは「日本中のあらゆる人の声に寄り添い、健康で活力に溢れた社会にコミットし続けることができるサービスをご提供し続ける」というものです。この想いから改めて多くの方に運動習慣を広げていくために、初心者向けのフィットネスジムであるchocoZAPをスタートしました。運動不足による健康リスクが社会課題となっている昨今、chocoZAPがもたらす社会貢献は大きなポテンシャルを秘めていると考えます。
村橋:サービスローンチ以降、店舗数・会員数共に伸びており、2023年5月中旬で全国572店舗を展開、会員数は55万人を突破しています。
大里:実は私自身もchocoZAPのヘビーユーザーで、妻も妻の両親も通っているんです。料金がリーズナブルな上に、好立地、さらには着替えや履き替えが不要など、「こんなジムが欲しかった」というサービスですね。セルフエステやセルフ脱毛もあるのは驚きでした。
村橋:身体を動かすことや、エステや脱毛を通して「自分が変われた」という体験をしてもらうことで、メンタルヘルスや自信につながると考えています。当社ではchocoZAPが「体も心も、最高に健康な自分に出会える」場所になることを目指し、多様なサービス提供を行っています。
ターゲットは初心者 上級者向けの器具はあえて置かない戦略
大里:chocoZAPのサービス設計についてお聞かせいただけますか。
村橋:ジムに通う際に最大のネックになるのは「価格」になります。そこで収益構造は考慮せず、「月額2,980円(※税別)」という誰もが通いやすい価格帯のジムを作ることを先に決めました。
大里:価格を先行したということですね。
村橋:そうです。先述したセルフエステやセルフ脱毛(※予約制)、さらには一部店舗で導入しているゴルフ練習ブース(※予約制)も、月額料金の中に組み込むことでジムに通う理由の創出を目指しています。これにより、ジムを縁遠く感じている方々にまずはchocoZAPに来店していただき、様々な設備の利用を通して、フィットネスへの興味にもつなげることが狙いです。
大里:確かに着替え不要なジムだから、エステ目的で来店されたユーザーが、そのまま普段着で運動も可能になりますね。これらを踏まえ、改めてchocoZAPのメインターゲットはどんな方になるのでしょうか。
村橋:chocoZAPのターゲット層は、フィットネスを既に行っている3.3%ではない、ジムの利用に慣れていない方です。
理由としては、フィットネス人口を増やす観点から考えると、ジムの利用が未経験の方への訴求に振り切る必要があったためです。具体的には、運動不足を実感しており、今よりも痩せたいと思っているが、日頃は運動の習慣がない方を想定しています。
フィットネス初心者をターゲットに据えるに当たり、その特徴がわかりやすく見えるのはフリーウエイトの器具がないことです。chocoZAPは24時間営業なので、利用者の安全面を考慮したというのが第一の理由です。加えて大きな理由として挙げられるのが、フリーウエイトはジムに慣れた人用の器具であるため、初心者側が気後れしてしまうことが多いからです。
既存のジム利用者層を取り逃してしまうリスクがあってもジム初心者の利用体験に集中するという判断をしました。