マーケティングセンターの役割は“皿洗い”
栗原:DXをどのように定義しているのかお聞かせください。
富家:難しいですね。現時点では様々な独自解釈が横行している状態です。やはり立場によって見方が違うんですよね。
2023年4月に新しい社長に代わり、「新たなコニカミノルタジャパンを目指すぞ」ということで、全社で取り組んでいます。実はマーケティングセンターが半年前に発足したのも、4月からスタートダッシュをかけるためで、この間にマーケティングセンターの役割について考え、準備を進めてきました。この準備期間で、マーケティングセンターが持つ9つの機能や短期・中長期的なアクション、コンテンツ戦略のフレームなどを策定することができました。
現在はその情報を社内で発信し、「マーケティングセンターとして、こういうことをやりたいので協力をお願いします! と随時発信しています。

営業推進統括部 マーケティングセンター マーケティング企画部 部長 富家 翔平氏
富家:一気に理想の姿をめがけて突き進んでいく方法もありますが、それはやりません。現段階では「事業部の方々がやりたいことを楽にする」サポートをすることに注力しています。部内で私はよく「まずは皿洗いから」とチームメンバーに説明しています。
栗原:皿洗いとは面白い表現ですね。
富家:以前、マーケティングサービス事業部にいた時に大失敗しているんです。自分が新しく関わらせていただくことになった事業責任者に、どんなマーケティングの取り組みをしているのか伺った際、「こうやりましょう、組織もこんな感じに変えましょう」と遠慮なく提案しまったんですね。「君にこの事業の何がわかるんだ」と言われ、数ヵ月ほど口をきいてもらえませんでした(笑)。
確かに事業責任者のリスペクトもなく、いきなり土足で入り込むようなまねをしてしまったと大反省しました。
その経験を経て今心がけているのは、事業部がやりたいことを尊重し、それが実行できるように「足りないパーツ」を提供することです。そして信頼関係を築くために、現場に入り自分たちの目で一次情報を取りに行くことで少しずつ理想に近づける、そんな活動から始めています。
栗原:KPI・KGIはどのようなものですか?
富家:正直にお話しすると、マーケティングセンターとして明確な数値目標は置けておらず、リード件数を掲げている状態です。というのも、マーケティングの実施状況や、各種ツールの活用度合いも事業部によってバラツキがあり、そこを整備することから着手しているからです。
仮にいま大きな目標を立てても、マーケティング施策の成果計測における課題もあり、結局最後は帳尻合わせに終わってしまいます。まずは各部門と信頼関係を築き、マーケティングに関するオペレーションをしっかりと構築したうえで、来年はパイプライン、3年後には受注というKGIを掲げたいと考えています。
Salesforceの導入から開始し、機能別・事業部別のチームを構築
栗原:具体的にこれまでどのような取り組みを重ねてきたのか教えてください。
富家:2017年にSalesforceのプロジェクトが立ち上がり、マーケティングプロセスの改革が始まりました。私が2018年にジョインし、3人でマーケティング機能を立ち上げることになり、その後すぐインサイドセールスとディレクターの方が入ってきて5人体制でマーケティングを進めてきました。
初年度はマーケティング活動もよくわからなかったので、見よう見まねでセミナーをやるだけでした。2年目からはSalesforceへの理解も深まり、打った施策がどのように受注につながり、パイプラインに貢献したのかが見えるようになりました。そして3年目に入ったタイミングでマーケティングプランの策定に着手するようになったんです。
栗原:当時はKPI・KGIをどのように設定していましたか。
富家:最初は商談アポ数、その後有効商談数、パイプラインと変遷していきました。
有効商談化率を上げる際に「当社にとってのいいお客様は誰なのか」「その層にアプローチするためにどんなコンテンツが必要なのか」と、ターゲティングとコンテンツに向き合う必要があります。これが3年目の2020年のことです。
その後コロナ禍に入り、Webサイトを一部リニューアルしてPardotとインサイドセールスを組み合わせてデジタル上で商談を取ろうという流れになりました。そのためにウェビナーを開催したんですが、視聴人数が5倍に増え、インサイドセールスとMA担当者が忙殺されるようになったんです。
栗原:どのように解決したのでしょうか?
富家:インサイドセールスを増やし、パートナーさんにも協力を仰ぎました。同時に、専任のPardot担当者を育てるためにマニュアルの整備や社内OJT制度を整え、マーケティング施策の実行力を高めていきました。
4年目になると、事業全体を見る立場になりました。そこで事業カットのマーケティングチームと、機能カットのオペレーションチームやインサイドセールスチームを組み合わせ、それぞれで横の連携・縦の連携をとりながら施策を進めていく流れを整えていきました。
そして2022年の下期から現在の部署に移り、これまでの活動を全社に広げていこうという流れになっています。