令和になって減っている朝食メニューは?
朝食の「中身」の変化を把握するために、「令和最初の4年間」の朝食メニューの出現率(家での朝食全体における各メニューが出現した回数)を図2に示しました。平成との比較のため、「平成最後の4年間」を100として表示しています。100より大きいものが、平成と比べて出現が増えたメニューということになります。

まず大きく減らしているものから見ていきたいと思います。目に付くのがご飯系メニューです。ご飯系メニューは全般的にほぼ毎年のように右肩下がりの推移を見せており、コロナ禍を機に急減したというわけではありません。「日本人のご飯離れ・米離れ」が、朝食においても顕著に表れているという見方が妥当ではないでしょうか。
ご飯が減ると、ご飯と相関の強いメニューの出現も当然低調になります。「漬物・ご飯のとも」が減っているのはまさに「ご飯離れ」が背景にあると考えて間違いないでしょう。「大きなおかず」の減少についても実は同じ原因と見ています。朝食における「大きなおかず」のうち、3割ほどを占めるのが焼き魚、干物焼きといった魚系メニューであり、こうしたメニューも多くが「ご飯があってこそ」と捉えられるからです。
このように、「ご飯離れ・米離れ」は単純に米の消費が減るというだけではありません。ご飯の周囲にある「ご飯と相性の良いメニューや食材」とも一蓮托生の関係にあり、ともに連動しているという意味で、とても大きな課題が潜んでいるように感じられます。
「ご飯離れ」が進む理由、必ずしも「パンシフト」ではない朝食市場
そもそも、なぜ朝食でご飯が減っているのでしょうか。原因は一つではないと思いますが、おそらく準備に手間や時間がかかることに対して負担を感じていることが大きいのではないでしょうか。
外で働く女性が少なく(専業主婦が多く)、かつ3世代世帯もめずらしくなかった時代と比べると、女性の社会進出、核家族化が進み専業の家事従事者が少なくなっている現代においては、「朝からご飯を炊く」「ご飯に合うおかずを準備する」というのはなかなかハードルが高いものであることが推察されます。
このように朝食でご飯離れが進んだ現状を目の当たりにすると、その減った分はやはりパンに流れているのだろうということを思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。ところが実態はそう単純でもなさそうです。
図2を見ると、確かに菓子パンは増えていますが、朝食の代表的なメニューである食パン・トーストは、実はほぼ横ばいで推移しているのです。このように菓子パンとトーストに差が出る要因もおそらくご飯と同じで、「準備の手間」によるものではないかと見ています。
トーストは焼く「だけ」ではあるものの、そのひと手間がかかることには変わりなく、さらにバターやジャムなどを塗って食べる場合が多いです。封を開けてそのまま食べられる菓子パンに比べると相対的には「面倒くさい」ということになるのだろうと考えられます。
このように、ご飯系メニュー、パン系メニューの動きから見えてくることとして、令和の朝食では「準備が簡単で、それだけで食べられる」ということが一つの鍵になっているように思われます。
ここまでメインとなる主食類を中心に見てきましたが、脇役で目を引くのは菓子・デザート類ではないでしょうか。平成の頃から実に3割近くも出現を伸ばしています。具体的にどういったものが「菓子・デザート類」全体を押し上げたのでしょうか。
表1にその内訳を寄与度の形で表しましたが、「ナッツ・乾きもの」「チョコレート」「クッキー・ビスケット」が特に押し上げ効果の高かったトップ3となっていることがわかりました。次の章で、ここについて少し掘り下げて考えてみたいと思います。
