「朝からお菓子」に垣間見える生活者の柔軟な行動変化
「朝からお菓子」と聞くと、どういったイメージを持つでしょうか。もしかしたら「一部の若い世代だけのことなのでは?」という想像されるかもしれませんが、キッチンダイアリーからはむしろ比較的高い年代の世帯のほうがこの傾向が顕著であることがわかりました。
また、「ご飯やパンの代わりにお菓子だけで手軽に済ますように変わってきている?」と思われるかもしれませんが、決してそういうわけでもないようです。図3は、朝食に出現するメニューの数を表したものです。たとえば「トースト、スープ、ゆで卵、コーヒーが出た場合」は4メニュー登場しているので「4」とカウントします。同様に、「クッキーと牛乳だけで済ませた」という場合であれば「2」となります。
このことから、もし「お菓子だけで済ませた」のであれば、お菓子が出た朝食のメニュー数は朝食平均を下回るはずですし、「お菓子を何かの代替にした」であれば、朝食平均と近しい値になってくるはずです。ところが実態は、朝食平均を大きく上回る結果となりました。すなわち、朝食で登場するお菓子は「何かの代替」や「単純な簡便性追求」ではなく、通常の朝食にプラスオンしていることが示唆されています。

どういう理由やきっかけがあって、「プラスオン」することに至ったのでしょうか。ここからは推測にはなりますが、入り口は「健康ニーズ」だった可能性が高いのではないでしょうか。
ナッツには様々な栄養機能成分が含まれているということは、近年すっかり認知されてきました。また、チョコレートも最近では健康訴求の高カカオタイプのものの市場規模が拡大してきています。ナッツやチョコレートを、通常のおかずとは別の位置づけで、一種のサプリメントのような感覚で習慣的に摂取している人が増えてきたということなのではないでしょうか。
大事なのは、生活者の行動を観察し寄り添うこと
前段でご紹介した「朝食のご飯離れ」といった大きな動きがある中で、健康をキーとした新たな別の流れも着実に生まれつつあるように感じられます。一般的な概念から考えるとナッツやチョコレートは「お菓子」であり、朝食との結びつきを見出しづらいものです。ところが生活者は、その概念を超えた行動を起こしているとも言えるのではないでしょうか。
いわゆる供給側(メーカーや小売りなど)の想定とは無関係に、「モノをシーンに合わせていく」というアクションを独自に進めているように見えます。
今回の朝食の分析を通して、これからは「生活者自身がモノをニーズに柔軟にあてはめていく」という時代が始まりつつあることを実感しました。そしてそれは、おそらく食卓という限られた範囲の話だけではないようにも思われます。供給側のお仕着せのメッセージよりも、生活者の行動を観察しそこに寄り添っていくようなコミュニケーションが、今後ますます求められてくるのではないでしょうか。その先に、「意外なものが意外なシーンで」というチャンスが見えてくるのかもしれません。