あくまでも、ゲームの拡張による課題解決
山田:JP GAMESを立ち上げられたのは、メタバースをやるぞ!というより、今まで作られてきたゲームの延長線で自然に広がったイメージでしょうか?
田畑:そうですね。ゲームそのもの、特にRPGを進化させて、ゲームの可能性を広げていく仕事がしたいと考えて立ち上げたのがJP GAMESです。ゲームクリエイターの活躍の場を広げて、ゲームの世界をもっと違う産業のフィールドまで広げることで、世の中の課題を解決したり、企業が持つDXの需要を満たせたりするのではと考えました。ゲームのテクノロジーやナレッジは非常に優れているので、道具・手段として提供することで、各企業の事業拡張や顧客とのエンゲージメントの向上、新しい顧客との出会いなどに活用できると思ったのです。当社はゲーム発の有効性や可能性を技術にしたりコンテンツにしたりして企業の方々とBtoBのビジネスを行い、その先にその企業のBtoCがあるという広がり方です。
山田:あくまでもゲームを拡張して、ビジネスに活用するというアプローチなのですね。ちなみに、田端さんは事業会社を「JP GAMES」「JP UNIVERSE」「LOGSYS」の3社に分けられていますよね。それは何故ですか?
田畑:JP GAMESはプロダクトを開発するスタジオです。4年半前に最初に立ち上げました。ゲームクリエイターは、ものづくり、ゲーム制作のスタジオで集中したほうがいいと考えました。その開発の中で出てきた技術をミドルウェア化したものが、「PEGASUS WORLD KIT」です。
JP UNIVERSEはミドルウェアとメタバース事業を広げるための会社です。「PEGASUS WORLD KIT」自体も、今後生まれてくる他の技術製品も、きちんと正しく導入・運用、販売し、ロードマップ化したり、コンサルティングしたりするには別の組織のほうがやりやすいと考えました。そしてLOGSYSは、「世界を越境する」ための様々なシステムを大手金融機関と共同で作るための会社です。
感覚としては各社が各部署という感じです。それぞれ、支援をしてくださる企業、パートナー会社の顔ぶれも異なるので、ステークホルダーが別という意味でも分けています。
「自由に行き来する流動性」が可能性を広げる
山田:先ほどの「世界を越境する」とはどういう意味ですか?
田畑:企業メタバースである各々の世界が、それぞれの企業で閉じていては、人、モノ、カネの流動性が生まれません。それに、ユーザーが世界を自由に越境して利用できないと、そもそもコミュニケーションを空間化していく意味がないのです。
山田:みんなが集まる1つの大きな場所を作ったり、独立した各空間を作ったりするのではなく、各企業の世界が分散しつつもユーザー同士が自由に行き来しながら、どこでもサービス利用や決済ができるということですか? その発想で展開するメタバースサービスは珍しいですね。
田畑:みんなが集まる大きな場所があるのは良いことだと思いますよ。私が必要だなと思っているのは、世界同士がつながることですね。これはゲームの例ですが、通常、ユーザーはゲームAの世界で得たものをゲームBの世界に持って行くことはできません。しかし、私はBの世界でも使えるようにしたいのです。
ただそれにはeKYC(オンライン本人確認)や決済方法の選択などの問題がありました。そこで、「企業とユーザーが安心して使える、世界を流動的に越境できるシステムを作りたい」とJCBさんに相談しました。本人認証にもレベルがあり、クレジットカードならカード番号とIDで決済できますが、もっと実印が必要になるような認証レベルが高い取引は金融機関さんに相談させていただきました。それで、認証と決済とを統合したシステムを共同開発していくことになりました。
ゲーム会社の私たちより、やはり国民の生活基盤である金融機関さんがシステムを構築するほうが、生活者としても安心ですよね。ユーザー同士の取引にも絶対的な安心感が生まれます。
山田:メタバースというとNFTを連想しますが、NFTも決済手段に入りますか?
田畑:はい、NFTも扱えます。ジャパン・メタバース経済圏というアライアンスを提携し、認証や決済を簡易に行えるシステムを企業に提供できるようにしました。メタバース空間内の生産や取引は、いつでもNFT化ができるデータとして保存可能です。そうすることでウォレットがなくても誰でも利用でき、NFTにしたければウォレットを持ってコンバートすれば使えるという柔軟性を持たせています。
