先にテキスト中心の媒体で展開した意図
──具体的にどのような媒体でキャンペーンを展開しましたか。
4月3日に全国紙4誌で、翌4日に全国紙1誌で新聞広告を展開し、同じ内容をTwitter広告でも掲出しました。

4月27日にはWeb上でメッセージムービーを公開し、5月7日よりテレビCMの放映を開始。東京・大阪・名古屋・福岡の4都市では主要駅内のサイネージ広告や屋外ビジョン広告でのコミュニケーションを展開したほか、日本全国の店頭でも関連キャンペーンを実施しました。
──先に新聞広告とTwitter広告で展開した意図をうかがえますか。
メッセージを受け取った一人ひとりに、それぞれの心の中で様々な「いい顔」を想像してもらいたかったからです。これから会いたい相手やチャレンジしたいことは人によって異なります。思い浮かべる表情も笑顔だけではないはずです。受け手の能動的な想像を促す狙いでテキスト中心の媒体を最初に選びました。4月3日のタイミングにこだわったのは、入学式や入社式などの節目を迎える方が多い日に前向きなメッセージを出すことが意義深いと考えたためです。
小売店と連携した統合マーケティングにも成功
──テレビCMと屋外広告にはそれぞれどのような役割を持たせたのでしょうか。
このキャンペーンの元々の狙いが「社会的な認識の変容」にあったため、メッセージが広く届けられるテレビは外せない媒体でした。
テレビCMや屋外広告を展開し始めたのは、ゴールデンウィークがちょうど明けた頃です。スマホの四角い画面を見ている時よりも、人と会うために街へ出て顔を上げたモーメントで触れていただきたいメッセージでしたから、そういう意味では久しぶりの屋外広告もベストな媒体だったと言えます。誰かと会ったりどこかに出かけたりする人が屋外で広告を目にすれば「表情が行き交う日々って素敵だったよね」「よし、今の自分に似合う新しいメイク商品を揃えるか」と思っていただきやすいためです。
──キャンペーンに連動したイベントも実施し、立体的な展開も試みたそうですね。
このキャンペーンはマーケティングチーム主導ではなく、社内の各所から「美の力で日本を元気にしたい」という声が集まって始動した背景があります。部署やエリアの垣根を越えてキャンペーンの大義や目的を共有できていたため、連動したイベントの企画や告知、運営を自発的に行ってくれたのです。

たとえば名古屋・栄にある地下街のサイネージで「みんな、いい顔してる。」のムービーが流れる中、近くの会場で「資生堂パーソナルBカラー診断」が受けられるイベントを実施しました。診断会場で商品は一切販売していませんが、自身に似合う色を知ってワクワクしたモーメントで、お客様は似合う色のチークやルージュを自然と探したくなります。近隣の小売店様と連携しているため、診断を受けた方が来店されてもスムーズな接客をしていただけるわけです。IMCの観点でもうまく生活者のモーメントや心の動きに寄り添ったパーセプション・フローを成立させられたと思います。