EV充電をはじめ、ソリューションを準備中
――現在、他にはどのようなソリューションを展開されているのでしょうか?
進藤:複数のソリューションを準備しています。ここではお伝えできる範囲でご紹介します。1つ目が省エネの領域でも店内の照明や空調などをコントロールする、エネルギーマネジメントシステムの構築です。一般に空調や照明、冷機といった機材はメーカーがそれぞれ異なるので、ソフトウェアを用いて一括で制御をすることは難しいです。我々はロボティクスによる制御という強みを活かして、解決を図りたいと考えています。実は4月から社内でインテリジェントビルの実証実験を進めていて、現在、40%のエネルギー削減に成功しています。
――具体的に、どのように制御するのでしょうか?
進藤:イメージとしては、たとえば照明のスイッチにスケジューリング機能のあるロボットを付けて一定の時間になったら電気を消すといった、人間が行っていたこまめなコントロールが不要になります。また、店内にセンサーを設置して一定の気温に到達したり人がいなかったりしたタイミングで空調を止めるなど、柔軟性を持たせてエネルギー消費量をマネジメントできるようになります。
2つ目が電気自動車(EV)充電の事業です。小売企業様の駐車場に充電器を設置または既設の充電器をアップデートして、充電体験と店舗での買い物体験をつなげる取り組みです。顧客接点を通した集客や販促という経済的価値につながるポイントに、EVという環境に優しいものを接続することで社会的価値を創出する狙いがあります。
充電には数十分ほど時間が掛かるので、その間に買い物をしていただく。しかも、それがお得にできるという、まったく新しいサービスを提供したいと考えています。
――お得というのは、特定の小売店で充電すると他の充電器を使用するよりもポイントが還元されるといったイメージでしょうか?
進藤:あくまで一例ですが、駐車場で駐車券を受け取って、店舗で買い物をすると駐車料金が無料というサービスがありますよね。このように、充電体験を便利に身近にしていきたいと考えています。また、電気自動車のオーナーは可処分所得が高いこともわかっているので、その方々が来店する点も魅力になるのではないかと考えています。
社会的価値と経済価値の橋渡しを目指す
――取引先や顧客などステークホルダーの反応はいかがですか?
進藤:社会的価値と経済的価値の接続というビジョンに共感いただけています。小売業界の皆様も社会的価値の創出のために積極的に多様なお取り組みをされています。一方で、それを売り上げや顧客接点につなげて経済的価値を高めるには至っていないのが現状です。
EV充電は新たな顧客接点を作れますし、EMS(Environmental Management System:環境マネジメントシステム)でも、制御のために把握する店内の人流や行動データをマーケティングに生かすといった拡張性があります。CO2の可視化も当然スコープに入るので、カーボンオフセットなど店舗を利用するお客様にアクションを促すなど顧客を巻き込んだ取り組みが可能になります。
――ありがとうございます。最後に、今後の展望をうかがえますか。
進藤:短期的な視点では、今お伝えしたような既存事業をしっかり伸ばして行きたいと思います。また、GXはまだまだルールメイキングが行われている段階です。情勢を追いながら社会的価値を作るための方法を認識し、提供していきたいと思います。さらに、その上で経済的価値を積み上げる、守りから攻めに切り替えられる準備を進めていきたいですね。
藤田:そもそも、サイバーエージェントがGXをやっていますと言うと驚かれることも多いです。あくまでも広告会社ですからイメージがないですよね。また、我々もこの領域に対して特別強い会社だとは思っていません。GXだけで勝ち抜いていこうとは考えていないのです。
前提として、GXは企業にとっては負担ではあると思います。CO2の直接排出量が少ない企業様ほど、まだ自分ごと化できていない現実があります。我々はコスト削減という文脈をメインに、集客やファン化、PRといったマーケティングの中にGXを組み込むことで最終的に小売業様の身になる部分を含めてお話をしています。ここが小売様にとっても新しく感じていただけています。
また、エネルギーコントロールについてはシステムを導入して終わりではなく、運用が重要です。データをモニタリングしながら設定をチューニングする、モニタリングの仕様を変える。これは我々が20数年やってきたインターネット広告の運用と同じなのです。広告運用のノウハウを転用して、しっかり運用していきながら小売業様の各店舗に最適なGXを提供していければと考えています。